格差と医療

しばらく前、米国で医療制度改革、いわゆるオバマケアの実現を推進する団体が、医療支出についての調査をしたという記事を読んだ。「日本の医療支出は先進工業国で最少、最高は米国 米調査

これによると、13の工業先進国(英・豪・カナダ・スイス・スウェーデン・独・日・ニュージーランド・ノルウェー・仏・米、オランダ・デンマーク)の医療制度を比較、医療関連支出が最も少ないのは日本の2878ドル(約23万円)、最も多いのがアメリカの8000ドル(約64万円)だったという。

日本では医療支出が予算内に収まるように医療費を設定することでコストを抑え、専門医や病院の利用、CTやMRIといった高度な医療機器の利用に制限をかけていないことなどが報告書で触れられているという。一方で、米国では医療費が高く設定されていること、医療技術を容易に利用できること、さらに肥満のまん延から医療支出が増えているとしている。詳しくは記事を参照してください。

アメリカで医者にかかって診察や検査、治療を受けたりすると、しばらくして医療保険会社から「医療費のお知らせ」が来る。自分の自己負担がいくらになるとか何とかという前に、とりあえずこれだけかかってます、という通知である。この金額が常に3桁、下手をすると4桁。「ほんとに保険きくよね」といつも少し不安になる。

先日ウロ(泌尿器科のこと)を受診した。「UTIと結石を繰り返しているので腎機能が心配になりまして。機能評価を」とお願いし、とりあえずディップテストと残尿検査をした。問題なさそうだけど一度きっちりやっておいたほうがいい、と医師はもろもろの検査指示とUTI用の抗生剤の処方箋を出してくれた。

今回の通知によると、この「診察とディップテストと残尿検査、処方箋」、これが529ドル。その日のうちに血液検査と新鮮尿は済ませてしまおうと外来検査部に行って採血・採尿をしたが、これで996ドルである。その後提出した蓄尿は150ドル。造影CTが軽く1200ドルを超えたのは以前に触れたとおりだ。

わたしは外来診察の自己負担一律10ドル、検査・加療は上限年500ドルの自己負担ですむので、必要とあればそれほどためらいなく医療が受けられる。これは王子が職場から福利厚生として提供される医療保険の恩恵で、個人でこれと同等の保険プランに入ったら、保険料で収入の数割が飛ぶ。

この医療保険は大手の保険会社、さらにPPOというシステムなので、自分で選んだ専門医をほぼ無制限に受診できるのだが、これが違うシステムだと専門医の受診にかなりの制限がかかる。文中で、日本では専門医や病院、医療機器の利用に制限がないと言及されているのは、アメリカでは加入する医療保険プランの種類やランクによってそういったものに制限がかかる場合が多分にあるからだ。

アメリカは世界トップクラスの格差社会で、人生のいろんなところにその格差が反映される。日本では親が泥水をすすってでも子供に教育を受けさせるというようなを話を耳にするが、この国ではある一定のラインより下の層に生まれたが最後、泥水をすすったくらいでは子女に高等教育なんか受けさせられない。

そしてその格差は、当然受ける医療にも反映される。現時点で政府が提供する皆保険制度はなく、日本レベルの医療は市民に対して保障されない。その一方で、高額所得者ほど充実した医療を受けることができる。

手術を受ける病院にしてもそうだ。先週のある日、普通に当日手術の患者さんの入院をとった。ひと通りの入院・手術の準備を終え、何か質問はないかと尋ねたところで患者さんの家族が言った。「もし手術が必要になったら、僕もここにお願いして、あなたを指名したい。設備もきれいだし、受付からここまでみな礼儀を持って笑顔で対応してくれて、説明も丁寧だし。点滴を入れるのに痛くないように局部麻酔をするなんて初めて見たよ」

実は最近知ったのだが、うちの病院は他の病院よりも医療費がかなり高く設定されている。その分、患者対看護師の比率が高く、病室は全室個室、退院前には医療マッサージ師が病室までマッサージをしに来る。だから、同じ手術を受けてもうちだと余計に金がかかるわけだ。

これで影響を受けるのは主に医療費の請求を受ける保険会社である。だから、保険会社としてはどこでもできる手術なら、加入者に安い病院で受けてもらったほうが得ということになる。

病院は事前に手術予定患者の保険会社に連絡を取って医療費が保険適応かどうかの確認を取るのだが、安い医療保険プランだとかかることができる病院にも制限がかかり、うちでの手術を許可しないことがある。一方で手厚い医療保険プランであればあるほど受ける医療や病院に制限がなくなり、患者の自己負担も変わらない。

自分の加入している医療保険プランのカバー力がよいことを知らないまま普通の病院で普通のケアを受けてきた人が、何かの治療でうちの病院に来て感動するというのはけっこうある。以前からやけにうちの病院の客層はいいと思っていたけれど、要するに貧困層お断りの病院だったというわけだ。

わたしは日本人だからなのか、医療と金とを秤にかけることに対する罪悪感がある。大切なものだから安価で提供されるべきだという考え方である。

でも、この国では人生で大切だと思うものは自分で行動を起こして手に入れるのが当然とされている。身を守るために治安のいいエリアに住む、きれいでおいしい水を得る、人生の条件をよくするために教育を受ける。そういった人生のすべてが自己責任であり、それをしないのは本人の意思だと多くの市民が考えている。

医療も当然例外ではない。健康のために喫煙をせず、食べるものに気をつけて運動をするかどうかは個人にかかっているし、必要時に医療を受けられるように備えておくのも個人の責任である。誰かが無保険だとしても、それを他者のせいにはできない。

さて、この調査をしたのはオバマ大統領が導入した医療制度改革法、いわゆるオバマケアを推進するアメリカの団体だそうだ。当然ながらこの法律にはアメリカ人の約半数が反対している。政府が収入にかかわらず誰にでも医療を安価に提供する、さらにその財源が市民の皆保険制度への強制加入だとしたら、それは建国精神に反する。

オバマケアは一部の州で違憲判決が出され、現在この法律は政府によって連邦最高裁に持ち込まれて審理中。そのうち判決が出ます。これが合憲になったりするとアメリカも医療費削減に乗り出したりして、看護婦さんが日本みたいに走り回って医療ミス連発なんてことになるのかしら。胸が熱くなるよね。

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契約解除

昨日、街を走っていて気がついた。

去年信号無視のかどで罰金を払うことになった隣町の交差点の監視カメラが撤去になっていた。監視カメラを運営する企業との契約終了まで数年残っていたのだが、設置した市は違約金数千万を支払って契約解除に踏み切ったんだそうな。

この州では10年ほど前から多くの市が信号無視を取り締まる監視カメラを導入していて、この市もその頃に導入したらしいのだが、これは市民の安全云々というよりは市の増収が目的だと言われている。しかし残念ながら管理会社に払う管理量が非常に高額なことに加え、召喚状送付などに伴う費用で自治体の負担が大きい。アメリカ人なので黙って払わない人も多い。で、信号無視件数を増やそうと黄色の時間を短くしたことが市民にバレて怒りを買い、しかたなく黄色の時間を元に戻したら件数が激減して採算割れ。さらに州内の他の自治体が裁判を起こされた挙句に州最高裁で「監視カメラ設置は州法に違反する」という判決を受け、州内のどの市も同様の判決を食らう確率が高くなった。そんなこんなで多額の違約金を払ってでも赤字拡大や面倒ごとを回避したかった様子。

信号無視の自動発行がなくなるとトラフィックスクールの減収になったりするんだろうか。でもわたしが住んでいる町にある二ヶ所の監視カメラは今日も元気に撮影中だよ!このエリアでカメラがあるのうちの市だけってどんだけ貧乏なんだよ…

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修復

当ブログで、コメントの数が記事上に表示されないという障害が起きていました。
現在修復されています。不便でごめんね。

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医療費

尿路感染と尿路結石を繰り返しているので腎機能を評価してもらうために泌尿器科医を受診し、指示された検査をひと通りすべて終えた。検査は血液検査(血算・BMP)、新鮮尿、尿培養、24時間蓄尿(一般・アジ化)、腹部・骨盤CT(造影なし及び造影あり)。

あとは来週の再診で総合的に判断してもらうのだが、それに先だってCTの画像の入ったCD-Rが病院から郵送されたきた。検査を受けたときに診療情報開示の手続きをしてあって、勤務の帰りにでももらっていこうと思ってそのままになっていた。勤務先からでかい封書が送られてくると、何をやらかしたかとビビるよね。

今回のこのCT、これまで大病をしたことのないわたしを気遣った医師が泌尿器のみでなく臓器一般の簡単なスクリーニングを兼ねて広範囲の指示にしてくれた。おかげで心臓から肺下葉、胆・膵・肝・脾臓・副腎・消化器・生殖器までがカバーされた。送られてきた2枚のディスクには結果報告書も添付されていた。

報告書には、結石が認められるほかにある臓器に嚢胞があり、良性と見られるが精査が勧められるとあった。どうもそこはときどきしくしく痛いところと合致するの。泌尿器科医の再診を待って必要なら専門医の紹介状を書いてもらおうと思う。

さて、今回のCT、保険適用前のお値段は12万と大変お高いのだが、MIPSというのか、再構成で3Dの立体画像にできるらしく、ドラッグすると身体をくるくるまわして臓器を前後あるいは上下から見ることができる。左右腎臓~膀胱の泌尿器はもちろん、10年以上前に受けた骨盤と大腿骨の手術の部位も3Dで再生され、手術で骨が切り取られた寛骨やそれが移植された部位、また術後に過剰形成された骨などをはっきり見ることができる。

さて、現在わたしは王子の医療保険に扶養者として加入している。この保険というのが扶養者含め保険料無料、医師受診は1回10ドル、予防的診療・検査は無料、めがねは2年に一度200ドルまでの補助その他もろもろの特典がつき、医療費は免責年500ドル、それ以降は全額免除という比較的寛容なものである。今回免責分500ドルがそっくり自腹だったのだが残りは保険適用で、これから今年いっぱいは医療費は保険が負担してくれる。たぶんそう。そうだといいな。

日本で看護師として勤務していた頃は月1.5~2万円程度を公的保険料として支払って3割自己負担だったから、年間の医療関連の負担は20万円弱+自己負担分だったということになる。そして今、医療費の負担は年間500ドル+α(受診時の自己負担10ドルは免責に含まない)である。

上手な医師だと保険が適用されるような理由をくっつけていろいろやってくれるので、より広範囲あるいは高度な医療を安く受けることができるということになる。だから、そういう医師を確保して努めて健康なうちから保険の範囲内で受診することは、長いかもしれない老後の生活の質、ひいては人生の質を上げることにつながる。 この間王子と一緒に皮膚科受診をしたら、王子の腕の癌化しそうな怪しいほくろをいくつか切除するついでに顔に浮いている毛細血管(ただの老化)を取ってくれたらしい。これは美容形成に当たるので本来は全額自己負担になるのだが「いいよ~、生検ってことにしとくから」と言われたとか。

もともとこの国では医療保険は就業時の福利厚生の一環として捉えられていて、よい職場であるほど質の高い医療保険が得られるというのが一般的なのだが、不況が続く昨今では医療保険の提供自体をやめる企業が増えている。その場合には個人で民間の医療保険に加入しないとならず、この場合はプランにもよるがひとりあたり月300~400ドルの保険料を払うことになる。全国チェーンの某大手病院が独自に提供する医療保険が非常に安価なのに優秀なので(その代わり縛りがきつい)、そこを使う人も多い。

そんなわけでアメリカの医療保険制度がすばらしいと言うつもりは毛頭ないのだけれど、個人的にはとても恵まれていて、今のところあんまり不満はないという話。

でも王子はやっぱり高いとぶつぶつ言っている。医療はただではできないし、てか負担重くないし、だいたい王子の金使ってないのに…

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春の別れ

わたしが勤務している病院の部署には看護助手が3人いる。基本無資格の男性で、バイタル(検温)や術前や検査前の剃毛(今でも指示する医師がたまにいるから)、患者の搬送や備品の補充なんかの雑用をこなすのがその業務。病棟には看護助手はいなくて、RT(呼吸療法士)がその代わりを務めている。

わたしが今の病院に採用になったときにも3人いたんだけど、いずれも頼まなければ動かないし、だいたい外にタバコを吸いに行っていることが多くて、いるだけどころかそもそもいないことが多かった。ポケベルを持たされていて必要になると呼ぶんだけど、戻ってくるのに10分15分かかってばからしいので何かを頼もうと思うことはあまりなかった。無資格の安い職種にそういう人が多いのはしかたがないことだ。

そういう人は長続きしないもので、3人のうち2人がその後数ヶ月でそれぞれ挨拶もなく辞めていった。少なくとも、3人の中で一番まともな看護助手は残っていたから誰も特に気にしなかった。

それぞれの代わりとなる看護助手が採用されたと聞いたのだが、わたしにとってはいてもいなくても変わらないので流していた。

ところがこれが大誤算で、その後配属となったふたりはとんでもない働き者だった。ひとりは孫がいる50代、ひとりははたちそこそこだったが、どちらも頼まれたことを気持ちよくこなすにとどまらず自ら動いて仕事を探し、できる仕事の範囲を拡げていった。その働きはもといた中では最も働き者だったはずの助手が見劣りするようになるほどだった。

わたしはそのふたりがとても好きだった。祖国を遠く離れたこの場所で、ひとりは父のような、ひとりは弟のような存在になった。ふたりとも、わたしは他の看護師のように顎で使ったり怒鳴ったりしないから気持ちよく頼まれごとを引き受けられると慕ってくれた。

稼ぎ頭の内視鏡室を閉鎖したのちこの部署の経営が怪しくなり、病院は職員の勤務時間を削減せざるを得なくなった。看護師1人の業務量が増えたとき、彼らが力になった。彼らなしで業務はまわらないことを、どの看護師も感じるようになった。

そんなふたりが近く病院を離れることになった。ひとりは転職が決まった。経営が厳しくなるにつれ、看護師のみでなく助手の勤務時間も削減されるようになったことで十分な勤務時間(=収入)が得られなくなって見切りをつけていたところに、うちの外科で勤務していた麻酔科医が自分のアシスタントにスカウトしたのだ。時給も上がるし、収入も保障される。

アメリカで彼のような働き者を探すことがどれほど難しいかを思えば、彼を大事にして十分な勤務時間を与えられなかった病院を責めこそすれ、彼を責めることはできない。てかあの麻酔科医、うまくやったなあ…

もうひとり、若い助手は病院に在籍したまま空軍に加入し、8週間の初期訓練後、将校訓練学校に入ることになった。大学に行きたいと希望していたが、裕福でない両親に学費を頼ることができず、軍に加入することで受けられる学費援助を目的に予備兵になることを決めたのだという。予定では1年後に復職だけど、しないような気がするし、それでいいと思う。

楽な道ではないこの決断をするのに彼はかなり悩んだようだが、それでも時間をかけて考えて決めたらしい。いいことだ。きちんと悩んで納得して決めたことなら、文句を言うことはあっても後悔はしないものだ。

わたしは恵まれていて高等教育を受けることができたけれど、それでも彼の年の頃、人生の武器にもならない学歴を手にどうしたものかと悩んだ。わたしはどう転んでも看護師に向いているとは言えないが、あの頃、就職できないあまり当時の彼と結婚でもしていたら、わたしの人生の終わり方加減はそれこそ今の非ではなかっただろう。

彼のように若く賢く働き者の青年がいつまでも未来のない看護助手でいるべきではないし、自分の人生を考えて行動を起こすことが正解なのは間違いない。だからうれしいことなんだけど、別れはつらい。行ってほしくない。仕事も回らないけど、それよりもいなくなるとわたしがさびしい。

今日が彼の最後の勤務日。看護助手くんの人生が春の日のように明るいことを望む。

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読了

先日読み始めた洋書、寝る前にぼちぼち読んで、先日大変楽しく読み終えた。この小説は評判がよく、今後映画化される予定らしい。

書籍によってはちゃんと読み終えることができるとちょっと自信がついた。とりあえず同じ作家の小説を続けて読んでみようと思う。

その昔都心に住んでいた頃、有楽町に近藤書店という本屋があって、3階にイエナという洋書屋さんを営業していた。他の洋書を扱う書店が小説をすべて著者のアルファベット順に並べていたのに対し、イエナは英米の20~30代女性向け小説のみのセクションを作っていた。その中から選んだものはたいがいハズレがなく楽しく読んだ。

そんな読書レプリカになってくれる書店が他にはなく、その後イエナが閉店してから洋書を読む機会も激減した。

この作家だけにとどまらず、何とか読める分野を開拓していけるといいなあと思う。アメリカ傷痍軍人協会が廃品回収に今週回ってくるというお知らせがあったので、着ない洋服や不用品と一緒にこれまでに読みかけて挫折した洋書を残らず出すことにした。節税にもなって大変おいしいです。

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永遠の少女小説

恥ずかしながら、わたしはこの国に来てから、英語で書かれた小説を一冊読み終えたことがない。

いばれるほどの読書量ではないが、日本ではよく本を読んでいた。今は海外配送をする書店から取り寄せたり、こちらの三省堂で一冊11ドルほどの文庫を買って読んでいる。別に日本語力を保とうとかいう気持ちがあるわけではなくて、ただ単に楽しいから読んでいる。

さて、わたしの上司は女性なのだが、この人の話はとてもおもしろい。話す内容ももちろんなのだが、表現力が豊かで奥行きが深い。こんな風に繊細な表現ができたらいいなあと思う。

わたしにそれができないのは語彙力がどうにもお粗末だからだろう。そして、わたしの英語の語彙が日本語と比べて圧倒的に不足しているのは、やはり英語での読書量が足りないからに違いない。普通に生活をするのに困ることはないのだが、今はこの言語しか使わないのに、それに深みがないことを日々肌で感じるのはかなりしんどい。

だから、機会があると適当に読めそうな現代小説のペーパーバックを買うのだが、つまらなくて続かない。わからない単語はないのに、読み進めることができない。職場にはブッククラブがあって、読み終わった本を上司の机のわきに持ち寄って積んであり、みな勝手に持って帰って読んでは返している。読めそうな本を見ると持って帰って読み始めるんだけど、がまんして読んでも読んでも話に引き込まれる気配がなくてリタイアしたりする。

英語は文章量あたりの情報が少ない言語だ。たとえばみんながつぶやくツイッター、この文字制限は本家の英語版でも日本版でも同じ160文字である。やってみるとわかるが、160文字で何かつぶやこうとすると、英語では言葉を吟味しないとすぐ制限に引っかかるが、日本語ではかなりの情報を盛り込むことができる。日本語と英語を併記しているマニュアルを見ても、たいがい日本語のページよりも英語のページの方が多くなっている。

日本語は表意文字である漢字を使用しているので表音文字のみの英語と差が出るのは当然のことなのだが、読書をしていて目で追う文字量に比べて内容の進み方が遅く、長ったらしくていやになるのかもしれない。

あとは、言葉への造詣が浅いので、日本語の小説を読んでいるときのように表現を味わうようなことができないのでつまらないということもあるだろうか。

いつまでも御託を並べていても仕方がないので、解決策を考えた。そして思いついたのは、「ヤングアダルト向けならどうだろう」ということだった。要するに文章がキャッチーで展開が速い小説である。往年のコバルト文庫、今で言うならラノベみたいなもんか。

大きめの書店のジュブナイル(日本でいうヤングアダルト=YAにあたる)のセクションに、以前タイム誌で「大人が読んでもおもしろい」と評されたのを見かけた小説があって買ってみた。ハードカバーなので高かった。

テーマはとても重いのだが楽しいので一気に読んでいる。寝たくないなあとか、仕事に行きたくないなあと思いつつ読んでいる。

こんな風に読書を重ねて、いつか英語の書籍を普通にわしわし読む日が来るんだろうか。来ないような気がする。ということは永遠にジュブナイル向けを読むということか。ジュブナイルを読む婆というのもシュールだけど、まあしょうがないよね。

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受診

再発を繰り返す尿路感染・結石で泌尿器科医を受診した。

これまで尿路感染を起こすこと5回。結石はハタチから数知れず、一度は尿管が石で完全に封鎖されて水腎症を起こしたことがある。とはいえありふれた病気なので、尿路感染を起こせば水分を摂りつつ手持ちのクラビット(抗生剤)を内服し、結石発作が起きればタイレノールやロキソニンを内服しつつ水分を摂ってはねて回って対応してきた。職場でわたしがジャンプしているのはけっこうありふれた光景になった様子。

そんな一時しのぎを繰り返していたら実は腎機能が落ちてました、なんてことがあったらどうすんの、と上司にがっつり説教され、重い腰を上げて腎機能評価を受けることにした。

幸い勤務の泌尿器科医が新患として受けてくれた。尿路感染症を繰り返しているので尿路に瘢痕形成が起きて腎機能が低下しているのでは、と聞いたら、それは腎盂腎炎なんかの上方の炎症で起きるもので下位感染では起きないから心配しなくていい、ただ一度評価をしておくというのは悪いことではないということで、ひと通り検査を受けることになった。

その場でディップテスト(スティックを尿に浸す簡易検査)をしたあと残尿測定。その後、採血(CBC、BMP)、採尿(新鮮尿、培養、24時間完全蓄尿)、腹部・骨盤造影CTをすることになった。

ディップテスト、日本で働いていたときには常に出ていた尿蛋白が陰性だった。こんなに働いてないのに日本より手取りが多い。暇な看護婦さん生活おいしいです。アメリカの看護婦さん用ビザが発給再開になったら王子と組んでビザ手続きと国試対策のエージェントを開いて看護婦さんをアメリカに送り出してやりたい。相変わらず景気悪いから当分なさそうな気だけど。

せっかく絶食して行ったので採血と採尿はその足で検査部に行ってすませ、完蓄の器具をもらって帰ってきた。そのうちCTの予約を入れて受けてこよう。うちの放射線科、造影CTに必要な点滴針留置は20G(針の太さ。布団針レベルの太さ)を使うと思い出してブルー。職場に寄って局麻使って留置してもらってから行こうかな…

日本なら勝手に自分の検査結果を職場のPCで確認するところだが、アメリカというところは個人情報に大変うるさい。以前電子カルテ上で自分の検査データを見たら翌日管理部から「職務上関係のない人物のデータにアクセスすることは、それが自分のものであっても個人情報保護法に触れるのでしないように」という警告のメールが来た。今回は医師が「内線で電話をくれれば結果を教えるし、自宅にデータの郵送もできるよ」と担当看護師の名刺をくれた。

今後は、CTの予約を入れた時点で再診予約を入れる予定。これまで日本から持ってきたクラビット(ニューキノロン系抗生剤)を飲んでいたけど、「なくなったら使うといいよ」とバクトリム(サルファ系抗生剤)を60錠処方してくれた。でもまだクラビットが手元にあと100錠くらい残ってるの。あんまり使わなくてすむと何よりなんだけど。

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今後の方針

EPAという経済協定に基づいて来日した外国人看護候補生の国試合格率がふるわないので国が「いっそ英語とか母国語とかで国試受けてもらったらいいんじゃね?」と言い始めて企画された検討会、「看護師国家試験における母国語・英語での試験とコミュニケーション能力試験の併用の適否に関する検討会」がその会合をすべて終え、正式な結果報告書その概要とが公表された。

これは検討会の報告書なので、こんな意見が多かった、こんな意見もあったという報告のみで、今後具体的に何をするかが書かれているわけではない。厚労大臣が今後の方針を決める際には参考にしたらしく、来年以降の国試については「とりあえず日本語のみ」「外国人のみ特例として試験時間延長」「漢字はすべてふりがなを振る」という方針を記者会見で発表している。

2日ほどまえに101回看護師国家試験の合否発表があり、外国人受験生の合格率は11.3%と、昨年の4%から3倍近くまで増えている。試験時間延長と漢字のルビ振りで来年はどうなるだろうか。

この間担当した患者さんに「この病院はホテルみたいできれいだね。でも何より、医師や看護婦さんが英語を話すのが何よりいいよ」と言われた。ネイルサロンならともかく、知的専門職にカタコトの英語話されると実際回れ右して帰りたくなるよね。

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週末

4連勤が無事終わったので、車で30分ほど走って日本食スーパーに行ってきた。今日の昼はかけそば、夜は筍とピーマンと牛肉の炒め物にした。日本食おいしいよね。ちなみに「日本食」は日本で広く食べられている食事の総称、「和食」はその中でも日本で伝統的に食べられているものを指すらしい。寿司は和食でカレーは日本食になるということか。綾鷹おいしいです。

これまで、引っ越した先に一度なじんでしまうとそこでそれなりに楽しく生活してきた。今の場所も悪くないのだが、ときどき「こんなとこで何やってんだか」と思うこともある。そういうときには、夜中にきのこの山を食べながらジオラマ風の東京を見たりする。

ぼんやりと昔の勤務先が見える。外から見る分には美しいけれど、実際にそこに根を下ろしてやっていくのが大変なのはあの病院も、東京という場所も、日本という国も同じ。

明日のお昼はいなり寿司とお吸い物にしよう。

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