妊娠中のタイレノール内服と自閉症

子供のころから何かあると胃が痛んでいたのだが、30代に入って本格的に胃が悪くなった。胃が痛くて夜中に目が覚める、食べると若干よくなる、強い心的衝撃を受けると胃けいれんを起こす、というわけで急性胃炎か胃潰瘍かわからないけれど、まあ何かあるんだろう。しばらくPPI(プロトンポンプ阻害薬)を内服していたが、長期内服はあまりよくないだろうということでやめることにして、今はただ痛いなーと思っている。そんなわけで鎮痛剤はタイレノール一択。アドヴィルやモートリンといった市販薬で知られるイブプロフェンは胃の痛みがひどくなるので飲むことができない。

で、そんな昨今「妊娠時のタイレノールは自閉症と関連があるため内服するべきでない」である。まさか21世紀のアメリカ合衆国で、エビデンス皆無の脳内妄想が政府のおふれとして発表されようとは思ってもみなかった。

妊娠していようがいまいが、鎮痛解熱剤を飲まなくて済むならそれに越したことはない。でも人間は往々にして鎮痛解熱剤が必要になることがある。それは妊婦でも同じことである。さらに、妊娠時の高熱は胎児に悪影響があるから、必要最低限で、かつ鎮痛剤としてはかなりやんわりめのタイレノールにしておきなさいというのが私の知る医学での常識だった。正直いまでもそうだと思う。

それにしてもあの厚生省のおっさんの自閉症へのこだわりはいったい何なのか。自閉症がここ数十年で爆発的に増えたというが、ほとんどの場合ただ単に診断方法が確立して、それまでは「ちょっと変わった子」程度だったのがくそ田舎でも自閉症だと診断がつき、早期療養ができるようになったというだけのことだ。200年前の日本ではがんという診断がついた人はひとりもいなかったが、当時がんがなかったわけではあるまい。

堕胎が国全体として合憲という判決が覆されたとき、私は遠くに住む女性のことを思った。経済的自立がなく、夫は安価な避妊具を使いたがらず、結果として望まない妊娠を繰り返して経済的に行き詰まる女性。鎌状赤血球貧血の既往がある女性が妊娠し、妊娠中期に急性増悪を起こしたが医師には人工妊娠中絶をすることで免許剥奪と訴追のリスクがあることから手が出せず、強度の疼痛に対しても、妊娠継続中だから強い薬も使えず苦しむ女性(友人のお嬢さんは妊娠後期だったため、緊急帝王切開後ICU管理を受けて生き延びた)。今回の妊娠中のタイレノールに関する勧告では、痛みや高熱に苦しむ女性がエビデンスという概念のない夫から「タイレノールを飲んだら子供が自閉症になると大統領が言っていた」と内服を禁じられて苦しむ絵しか浮かんでこない。

任期はまだあと3年以上ある。そのうち「女性は判断力が男性に比べて劣るため、投票権を与えられるべきではない」くらいのことを言い出しそうな気がする。根拠なんか必要ない、俺様がそう知っているから。

「氷河期だけかわいそう」は本当ではないかもしれないが、それでも氷河期はつらかったという話

「『氷河期だけかわいそう』は本当か…『大卒でもみんな正社員になれなかった』を覆す”意外なデータ”」という記事を見かけた。


1990年半ばから2000年代初めにかけてのいわゆる「就職氷河期」について、最近「当時は自己責任だといわれてきたが、それは厳しすぎたのではないか」といった論調を見ることが時々ある。就職氷河期どまんなかで就職活動に惨敗した負け犬からすると今さら何言ってんだ程度で流すしかないのだが、だからって「別に氷河期がかわいそうってわけじゃないんじゃないの、ほらこれデータ」と古い傷のかさぶたをはがすようなことを言われる筋合いもない。

タイトルから見るに、この記事のメインは「ただ、その就職環境の最悪期においても、無業・フリーターは大学卒業生の26〜27%だ」だろうか。ピーク時で14万人が大卒時に無職やフリーターだったが、実は「正社員就職者は、無業・フリーターの倍以上」だったと。

大学を卒業したのにまともな就職ができなかった人数が14万人いたということが「別にそんなでもないじゃん」と言いたいわけか。55%の大卒者が正規雇用にありついたのだから、この世代が特にかわいそうなわけじゃないと。

この筆者は1964年生まれらしい。大手メーカーに勤務してから求人系の超大手に転職したんだそうだ。1964年生まれが現役で四年制大学を卒業すればバブルのまっただなか、超売り手の就職である。親しくしていた従兄が記事の筆者と同い年、ストレートの大卒でいくつも内定をもらっていたから当時のことはよく覚えている。説明会とか行くとなんか入った紙袋とか厚い冊子とかもらってきていた。景気が良すぎて公務員の倍率が史上最低を記録したころだ。こんな人が氷河期を語るとか、あまりの説得力のなさに脱力するしかない。上から目線にもほどがある。

氷河期当時、大学の同期の親は就職に役立つようなコネを必死に探し、学生はいくつもの企業に応募した。30万人以上が正規雇用を勝ち取り、30万人弱が大卒の時点でつまづいた。それは当時自己責任だと言われた。実際、私の同期も半数はなんとか就職した。半数はできなかった。一部は院進学を決めた。多くは地元で家事手伝いや派遣社員になった。就職できなかった同期は誰も結婚していない。就職した同期の一部は勤務やノルマがつらくてその後ドロップアウトし、非正規雇用になった。そういった同期もやはり結婚していない。分母の大きいこの世代はその後少子化を推し進めた。今後は高齢化に加担することになる。

どの世代にもその世代なりの苦労や生きづらさがあるのは想像できる。食うに困らなかったことを思えば、私たちの世代だけがしんどかったわけではないだろう。それでもあの頃は本当につらかった。そして、毎年10万人もの大学卒業者が就職がかなわない氷河期状態が10年も続けば、その数は100万人を超える。その100万人がスタートラインで時代の恩恵を享受した人から「氷河期がそんなにかわいそうというのは言い過ぎだろ、就職できなかったのはたかだか14万人。55%は正規雇用になってんだよ」というクソみたいなことを言われたら「お前が言うな」と思うだろう。


キャッチーではあるが誰も得をしないくだらない記事だった、ということでこれからも生きていく。この記事が載ったらしい『プレジデント』とかいう雑誌は二度と見たくない。

日本で売れる車

身内に不幸があって急遽一時帰国をした。

一時帰国時にはいつもニッポンレンタカーで車を借りていたのだが、今回は別の会社にした。借りる際には保険MAXだが、帰国時に運転するといっても地元で用事を済ませたり身内の見舞いに行ったりする程度でいつも問題なく返却している。どうもそれは会社側からすると頭が悪い使い方なのか、前回は走行距離が少ないことで「あんまり使わなかったんすか、もったいない」だの、念のために借りたETCカードを使わなかったので「使わなかったんですかー」と嘲笑されてしまった。こっちだって事情があるんだわふざけんな死ね、と言いたいのをこらえて愛想笑いをして、二度とここには来ないと決めていた。だからもう行かない。

それで別のレンタカー会社にしたのだが、なんとここには他では見たことがなかった軽自動車が用意されていた。それで今回の一時帰国は初めて軽自動車を運転したのだが、これが動きやすくて本当に助かった。町で見かける車は軽自動車、特に背が高い軽自動車が本当に多かった。

そして思う。あの不動産屋がアメリカ車を日本人に買えと言うならその車を持ってきてうちの地元で乗ってみせろ、それですいすい走って燃費がよければ日本人でも購入を検討する人だっているだろうよ。

私はアメリカでは日本の小型車に乗っている。1500ccだがこれでもアメリカでは最小で、フリーウェイを走っていて前後が大きなトラックだと「今ここで何かあったらこの車は段ボールみたいにつぶれるだろうな」と思う。気候や文化で食べるものが違うように、合っている車もまた違う。その場所で自動車を売りたいと思うなら、その文化に合ったものを持って行った方が成功する確率は上がる。

今回のレンタカー返却時は「あ、鍵もらいます。特に問題なかったっすよね、あしたー」で終了した。次もここにしよう。

日和見大統領

不動産屋は昨日、相互関税からスマートフォンなどの電子機器を除外すると発表した。

派手に日和りやがって、何が「(株価の暴落を受けて)何かが下落することを望んではいない。しかし、時には何かを治すために『薬』を飲まなくてはならない(要するに関税免除はしない)」だ。日和って撤回するくらいなら最初からするな屑。てか電子機器を免除ってそれ中国の得意分野ストライクゾーンどまんなかでもうぐだぐだ。次は何だろう。おもちゃかな。クリスマス商戦で誰も何も買えなくなると小売業からも消費者からも不満が爆発しそうだし。

今回の関税、スマートフォンなどの電子機器も適用範囲外にはならないと不動産屋が言い続けていたから先週iPhone 16proを購入した。昨年このバージョンが出た時に一応見に行ったのだが、どうもテンションが上がらないので17を待つことに決めていた。それが関税で次は大幅に価格が上がると踏んで前倒しにして購入したのだ。

1週間ほど使ってみたのだが、やっぱりテンションが上がらない。だいたい使っていて違いが判らない。多少違うのだが、普段使いで「おお最新機はやっぱりすごい」と思うことがほとんどない。休日に家にいて、ふと気がついたら使っていたスマホが古い方のiPhoneだったことがあった。使っていてまったく気がつかなかった。これでは出費を正当化できないので返すことにした。

ところであの不動産屋は「米国に製造業を取り戻して雇用創出」としつこく繰り返しているけど、誰が大枚はたいて工場を作るのか、そしてそこで誰が何を作って、それをいくらで売るのか。高給に慣れた米国市民は時給2千円程度の求人に応募なんてしないし、たとえ応募したとしてもそんなに人件費に金を出したら製品の価格が高くなりすぎて、中国製品に関税をかけても太刀打ちできない。頼みの綱の格安労働者・不法移民は岩盤支持者にいいとこ見せようと思ってかたっぱしから逮捕してるから怖がって表に出てこないしな。

社会が成熟してくると、第一次産業や第二次産業の比率が低くなって実入りのいい第三次産業の比率が高くなるのはわりと自然なことで、その代わりに賃金の安い途上国に第一次や第二次を担ってもらうようになっているという、わりとどこでもそういう話なんじゃないかと思うんだけど。米国に製造業を戻そうなんてノスタルジックなことをやっても、現実にそぐわないからうまくいかないんじゃないのかしら。

ところであの不動産屋、使う英語が小学生レベルなんだけど、あれは妻があんまり英語が上手じゃないからわかるように話すうちにそうなったのか、それとも支持者の教育レベルに合わせているのか、それとも本人のレベルがもともとあんな感じなのか。別にどうでもいいんだけど。

不動産屋の嘘

やるやる詐欺だと思っていた不動産屋の関税が実現してしまった。米国内や隣国を含め全方位に噛みつくこの関税、一部を延期したようだが引っ込める気はないらしく、中国とは殴り合いのけんかになっている。株式市場は暴落の日々で、王子が真っ白に燃え尽きた矢吹丈みたいになっている。

食料品以外のほとんどすべてのものが値上がりしそうなので、とりあえずコストコに数日通ってトイレットペーパーやカナダ産メープルシロップといった日持ちのするものを買い込んだ。屋根裏に上がって備蓄。これで1年は持つ。コストコのトイレットペーパー(カナダ産)もティッシュ(これもカナダ産)もどこよりも安いが、この価格もここ半年くらいで徐々に上がっている。

そしてアップルストアのアプリでiPhone 16を購入した。発売時に見てあんまりぱっとしない感じだったので今年の秋出るであろう17まで待つつもりだったんだけど、今回の関税はアップルなどの国内企業も今のところ適用範囲外にはされていないからこのまま行くと値段が大幅に上がる。当然だけどiPhoneなんて米国で企画・販売されているだけで生産は100%外国である。部品・組立工場のある国からの輸入に2割やら5割やらの関税がかかれば当然価格に反映されることになる。不動産屋が死ぬなり殺されるなり任期を全うするなりするまで最大4年、その間16でしのぐしかない。来月はiPadを買い替える予定。今使っているiPadは王子からの貢ぎ物で比較的新しいんだけど、なんと今時64GB。毎日容量が足りませんというメッセージがロック画面に出ている。

そして思う。不動産屋に明るい未来を見出した白人貧困層(主に男性)は今でもあの不動産屋が繰り返す与太話を妄信しているのだろうか。我々は外国に関税を払わせる、そして米国に製造業が戻ってくる。減税。物価が下がる。アメリカは再び偉大になる。

関税は米国内の輸入業者が米国政府に払って財政に入るものだから、結果的には国内消費者が負担することになり、輸入品の消費者物価は上がることはあっても下がることは考えにくい。関税による税収も消費が冷え込めば計算通りの額は入らないし、不動産屋の好きなディール(要するに脅迫外交)で廃止されれば税収自体がなくなる。

製造業は国内回帰するのか。現在ある製造業が増産することはあるだろうが、一度失われてしまった製造業が米国内に戻るだろうか。もともと米国の産業が失われたのも、米国市民は手先が不器用なところにきて作業が適当で、それなのに人件費が高くてコスパが最悪だからだ。関税を払って輸入したものと、初期投資と人件費とをかけて製造した国産のもの、品質と価格とを天秤にかけて、米国市民はどちらを選ぶだろう。そしてこれまで輸入品に頼っていた品目が残らず値上がりした時、あの不動産屋を妄信していた岩盤支持者は何を思うだろう。それでもこの過渡期を乗り越えたらこの国は偉大になると信じることができるなら、それはそれで幸せなことかもしれない。

外国人の入国審査

一時帰国してきた。

親族が入院したのでその見舞いと、手続きや買い出しなど何かできることがあればと。久しぶりの故郷の風景は昔と変わらず美しかった。

その後米国に戻ってきたのだが、入国審査が以前とは一変していた。入国審査の列にはふたつあり、わたしが知る限りいつも「米国市民と永住権保持者」と「訪問者(ビジター)」という区分だったのだが、これが「米国市民」と「永住権保持者と訪問者」とに変わっていた。前回までは米国市民側に王子と並んで通過していたのだが、今回は訪問者側である。王子は米国市民なのでとっとと通過できる方に並べるのだが、「かいるびが自分と同じ列にいられないのなら、自分がかいるびと同じ列で待つ。こんなところで離れるわけにはいかない」と言い張った。

そして待った。訪問客の入国審査は時間がかかる。審査そのものが詳細なのに加えて英語の怪しい人もいる。入国審査を終えるのに2時間半強かかった。これまでは30分と待ったことがなく、本当に長かった。乗継便があったら確実に乗り遅れるレベル。そして待ちながら、「この国はどこからであれ外国人にはいてほしくないのだ」と思った。

米国市民との結婚による永住権の請願および申請には長いプロセスがあり、これまでの居住地やら収入やら犯罪歴やら、いろいろなチェックが入る。その上で大使館での面接を経てビザが与えられ、入国後にグリーンカードが送られてくる。最初のグリーンカードは2年間有効で、10年間有効のグリーンカードに切り替えるために再度審査が行われる。この時には偽装結婚を疑われて追加の書類提出を求められた。とはいえ別にやましいところがあるわけではない。ふたりで一時帰国した際の搭乗券やら王子の家族と一緒にイベントごとをした時の写真など80枚やら二人宛てに送られてきたグリーティングカードなど、思いつくすべてを送り付けてその後10年物のグリーンカードが送られてきた。

そんな風に国土安全省ががっつり身元調査をしているのだから、再入国時に訪問客と同等レベルの入国審査をすることに意味はない。テロリストならば時間も金もかかる永住権の手続きを踏んだりはせず、ただ単に入国すればすむことだ。要するにこの国は「米国市民」と「それ以外」との区別を作り、それをはっきり提示しているのだ。

ここ数日で「米国の永住権保持者が米国への再入国を拒否されて強制送還された」といった話を聞くようになった。中東系であろうが欧州系であろうが関係なく、納得のいく理由が提示されることもなく米国内の生活拠点を失うのだ。それがわたしに起こらないと言い切る自信はない。

現政権は「敵性外国人法」を発動した。これにより米国政府は米国内にいる特定の国に出自のある人物を法的に公平な手続きを経ることなく拘束・強制送還できる。戦時中に起きた日系米国人の財産没収・強制収容の足がかりとなった法律である。実際に日系米国市民がスパイ活動をしたといった理由があったわけではないし、同じ敵性外国であっても、イタリア系やドイツ系の米国市民や移民が同様の扱いを受けたわけではないから、薄っぺらい正義感に基づいたただの差別としか言いようがない。今の米国は「自分は白人様なのだから外国人よりも優れている」と考える屑と、その屑の歓心を煽るためなら三権分立を破壊することも厭わない不動産屋が恥の歴史を繰り返そうとしているようにしか思えない。大統領が司法をないがしろにし、行政が恥ずかしげもなくそれに尻尾を振って従い、市民の半分が熱烈に支持する、米国はそんな国になったらしい。

わたしが現政権批判をしたかどで永住権剥奪・強制送還となる日もそう遠くないのかもしれない。犯罪歴がないわたしにそんなことが起きる国ならいる意味はないからとっとと帰るけど。

王子に「この国は移民が嫌いになったんだね。別室に送られて、『今日の配偶者のパンツの色は何だ』『昨日の夕食は何を食べた』みたいな同じ質問を別々の部屋で聞かれて、回答が合致しなかったら偽装結婚だとされて拘束されて、永住権剥奪の上強制送還とかあるのかなー」と言ったら無視された。そんなことをしているうちにわたしたちの順番が来て、王子が審査官の質問ふたつに答えて終了した。2時間半待った審査は30秒かからなかった。

はしかと陰謀

米国の一部ではしかにかかる子供が出てきているという。
今のところ死亡が一件。無料で受けられる予防接種で簡単に防げるようなつまらない病気で死んだというのが残念。

日本でも20年ほど前に大学生の間ではしかが流行したことがあった。はしかは空気感染だから感染力がそれこそ結核なんかより桁外れに高くて、一緒の教室で90分も一緒に座っていればウイルスはすみずみまで行き渡る。ただ普通に大学に通学している10代後半とか20代とかの若者なので、はしか程度で死ぬことはまずない。ただこれが乳幼児だと話は違う。普通に栄養状態がよければたいがいあっさり治って免疫がついて終わりになるけれど、経済的に恵まれていなくてあんまり栄養状態がよくなかったり運が悪かったりするとときどき肺炎とか脳炎とかを起こしてそのまま亡くなったり、助かっても後遺症が残ったりする。あと忘れたころにいきなり脊髄炎を起こることがあるらしい。見たことないけど。

米国だと普通に誰でもMMR(おたふく・はしか・風疹の混合予防接種)とDTaP(ジフテリア・破傷風・百日咳)なんかを受けるもんだと思っていたので、米国市民の子女が未接種ではしかにかかったという話で少し驚いた。でもテキサス州、しかも郊外、さらに宗教色の強い場所となるとさもありなんとも思う。本当に個人的な思い込みだしここがそうだとは言わないけれど、保守派が多いエリアに住むちょっと閉鎖的な宗教の教徒だと、いわゆる陰謀論に引っかかりやすい。そしてそこにエビデンスが入る隙はない。なぜならすべての情報は操作されていて、真実は遮断されているというのがその前提にあるからだ。予防接種を無料で受けさせる政府も製薬会社に騙されているし、医者も儲けるために一緒になって陰謀に加担しているとか何とか。あの辺って新型コロナ感染症がはやり始めたころに「これは民主党のでっちあげだ」とか言って何の感染対策もせずに、爆発的に感染者が出て人がばたばた死んでからそれが実在することはわかったけど、それでも予防接種は民主党と製薬会社の(後略)

より都合の悪いことに、今度の厚生長官は陰謀論に首まで浸かった人物である。昨年このトンデモ厚生長官は小児まひ(ポリオ)の予防接種の安全性に疑問があるとか何とかで政府の承認を取り消せと申し立てをしている。それじゃああれか、感染力がハンパでなく高くて、かかったら治療法がなくて治らなくて、亡くなるか後遺症で身体に麻痺が残る病気に小児がかたっぱしからかかるほうが安心だというのか。ポリオの予防接種が過去どれくらいにわたって実施されてきたかわかって言っているのか(60年ちょっと)。こいつはそのほか10以上の予防接種にもかみついている。高等教育を受けていない人たちはそういう「既成の概念を打ち崩す」みたいな話にのりやすい。医師や科学者がどれほどの使命感と情熱をもって予防接種を開発したのか、それによって助かった命がどれほどあるのか、そんなことを調べることは当然せずにただ「政府と製薬会社の陰謀だ」と聞いて納得する。そしてその子女が予防接種で簡単に防げる病気にかかって苦しむことになる。

あの厚生長官のような扇動する有名な人物の罪は重いと思う。そしてこんな人物を厚生長官に指名した大統領も同罪だと思うけど、あの大統領は何かあったら手下に全部なすりつけて自分は知らなかった、で終わりにするんだよね。手柄は全部自分が総取りだけど。

米国を再び健康にするには

連邦政府の厚生長官になったキワモノ弁護士が中心となる「米国を再び健康にする委員会」を設立するという大統領令が出た。キワモノ厚生長官が委員長となり、「米国で急激に悪化する不健康さについての調査をし、ことにまず小児の慢性疾患に焦点を当て、その根底にある原因を明らかにする(大統領官邸の公式ウェブサイトのこの委員会に関する概要報告書より適当に邦訳)」というものらしい。以下その骨幹を適当に訳してみる。

適当訳ここから、カッコ内は注釈あるいは筆者による適当なコメントですーーー

・今後100日以内に、小児の慢性疾患に関し現在までに判明していることおよびまだ判明していないことについて評価しまとめる。これには外国との比較も含む
・今後180日以内に評価で判明したことに基づき、米国市民の子女の健康増進についての戦略をまとめる
・慢性疾患に立ち向かうための調査は(巨大製薬会社のような邪悪な、と言いたいらしい)第三者による調査結果などではなく連邦政府によって資金供給される研究を優先して採用する
・米国市民が有意義な生活への変更や疾患予防のための医療制度や加療方法の選択を拡大する

(訳者注:次に、米国内で拡がる慢性疾患について「経済や国家の安全保障に深刻に影響する米国民の慢性疾患について、その加療よりも防止に焦点を当てる」とし、以下のようなデータを提示している。ちなみにソースなし。たぶんCDC、米国疾病管理予防センターの公式サイト)

・米国において、10人に6人の成人が少なくとも一つの慢性疾患をもち、さらに10人に4人は二つ以上の慢性疾患をもつ。
・新型コロナ感染によるパンデミック以前、諸外国の平均寿命が82.6歳であるのに対し、米国の平均寿命は78.8歳であった。これは実に米国市民合計で12億5千年短いということになる
・1990年から2021年の間に米国での悪性腫瘍は88%の増加を見ている。年齢ごとの悪性腫瘍の数は204か国ので2位にほぼダブルスコアの差をつけてのトップである
欧州・アジア・アフリカのほとんどの国と比べて米国の喘息の頻度は非常に高い

・小児における慢性疾患も増えている。小児という期間は通常人生の中で最も健康な時期であるにもかかわらず、40.7%にあたる300万人の小児に何らかの慢性疾患をもつ。これらはアレルギー、喘息、自己免疫疾患などである。
・36人にひとりの小児に自閉症が見られ、1万人に対し1~4人であった1980年代から急激に増加している
・10代の若者の18%が脂肪肝で苦しんでおり(別に苦しんではいない。脂肪肝そのものに症状はない)、また4割以上が「太り気味」あるいは「肥満」であり、これまでの世代ではなかったことである
・小児がんは現在でもまれな病気であるが、1975年から毎年0.8%ずつ増加しており、過去45年で4割増加している
・薬漬けが特に小児で問題になってきている。340万人の小児がADD/ADHDの薬剤を内服しており、診断数も増加している、

・慢性疾患が軍隊制度や経済に大きな影響を与えている。77%の若者が主に肥満や薬物使用、身体的・精神的疾患により入隊基準を満たしていない。
・米国における4.5兆ドルの医療費の9割が慢性疾患や精神疾患の加療に充てられている
・米国は他の先進国と比べ一人当たりほぼ倍の医療費がかかっている
・米国市民は医療制度に対する信頼を失っており、健康危機の原因、そしてその改善について誠実な回答を得ているかについては疑わしく感じている。米国の医療制度を信頼する米国市民は3人にひとりとなっており、これは記録的な低さである


(訳者注:次にこの報告書では対策として、この偉大な不動産屋が「何が慢性疾患の増加の原因か、そして未成年のひとりひとりが安全で健康な小児期を送るための勧告を委員会にまとめさせるとし、次のように付け加えている。)

・不動産屋の前任期では医療費を削減し、治療方法の選択肢を増やし、米国市民がよりよいケアを受けられるようにした
・終末期の患者が治療が受けるためのRight to Tryという法律を制定した(これは政府未認定の薬剤などを患者の意思で受けられるようにしたもの。当たり前だけど何が起きても自己責任
・鎌形赤血球症の患者が最近開発が進んでいる遺伝子治療が受けられるように計らった(これはもともとバイデン政権による大統領令「鎌形赤血球症及びその他の遺伝子疾患に対する研究・調査・予防・治療に関する2023年法」に基づくアクセスモデルに過ぎないので、私が知る限り不動産屋は特に何もしていない
・薬物使用についての非常事態宣言を発令し、「患者と地域社会への支援に関する法律」を成立させ、国家未曽有の薬物乱用危機について広く呼び掛けた(発令したのは2018年。でも金を出し渋ったのか大したことができずその後も薬物乱用は悪化の一途をたどることになる
・医療サービスが届かない地域に対するオンライン受診の可能なエリアを拡大した

適当訳ここまでーーー

素晴らしい大統領令だけど、具体策がまるでないことはさておいて、何から何までなんとなくおかしい。米国市民の平均寿命が短い理由には肥満や医療制度上の格差などいろいろあるだろうが、スタートラインである周産期死亡率、つまり外界でも生きられる胎児(22週以降)と新生児の死亡率は先進国にしては異例の高さである。米国に生を受けた時点で生き残る確率が他の先進国に比べて低い。人種間の格差が大きいが、被害者意識丸出しの白人が支持する白人だらけの現政権の面々を見ていると、それが改善されることはないだろうな、と思う。次に小児の4割に何らかの慢性疾患がとあり、ここでは小児の慢性疾患として喘息やアレルギーが挙げられているが、米国での小児喘息の罹患率、食物アレルギーの有病率は他の先進国と比べて有意に高いわけではない(これについては日本の厚労省の公式サイトとCDC、米国疾病管理予防センターの公式サイトを参照しています)。高いのは肥満率である。米国ではざっくり言えば「肥満」は状態を表すのみでなく実際に治療対象となる診断名として認められている。だから肥満の小児はそれだけで「慢性疾患」があるということになる。成人の肥満率(BMI30以上)は4割を超える。若いうちは何とかなるが、40代に入る頃からは肥満から慢性疾患が起こる。関節がやられ(慢性疼痛)、心臓がやられ(高血圧・心筋梗塞・脳血管障害)、糖代謝が追い付かなくなる(糖尿病)。貧困層は食育を受ける機会もなく、そのために肥満とそこからくる慢性疾患にかかりやすくなる。肉体労働の割合が多い人種ではこれにより就労が困難になり、雇用ベースの医療サービスを受けることができなくなる。セーフティーネットであるメディケア・メディケイド・オバマケアは受けられる医療サービスの制限が大きい。

肥満の度合いを下げ、たとえばBMIを30未満に抑えることができれば状況は変わると思う。政府の介入として素人考えで浮かぶのは、米国市民が教育を受ける機会を拡大し教養を深めることができるようにする、雇用援助でファストフードのような超加工食品でない、政府が勧める健康的な食品を摂取できるようにする、そして医療保険を拡充し、安価で良質な医療サービスのアクセスを容易にする、薬物依存者にはそのベースにある問題に焦点を当て、薬物から切り離すのみではない全人的なアプローチをする。企業に対しては健康被害が考えられる食品添加物の使用をやめさせる。また健康に被害が及ぶとされる化学物質について調査し、それに基づいて企業に行政指導を行う…とか。

でも市民の健康を目指して掘り下げるほど共和党が目指す小さな政府とは逆方向に走ることになる。基本的に共和党はその内容に関わらず政府からの干渉や課税を極力避け、その代わりその結果は自己責任、というのが建国以来の理念のはずだ。だからこそあの不動産屋は新型コロナ感染症についてもマスクの着用を公衆衛生ではなく政治的な話にすり替え、人々はそれに従ってマスクの着用を拒否し、着けている人におまえらは民主党のイヌだと怒鳴りつけ、残念ながら米国では百万人以上が亡くなった(日本は7万5千人弱)。米国市民、特に共和党支持者にとっては、個人の自由が何よりも優先されるものらしい。薬物乱用で息が止まろうが、肥満で糖尿になろうが関節がいかれようが、それは私の自由だ、私は食べたいものを食べやりたいことをし、言いたいことを言う。何も違法なことはしていないのだから、他人、特に政府に干渉される謂れはない、疾患防止策に税金を使うなんて、ここはいつから社会主義国家になったのか、そんな金があるならグリーンランドを買え。

トンデモ厚生長官はもともと民主党の政治家一家の出身だから、そういう公共の福祉的なことが念頭にあるのかもしれない。日本出身のわたしにとってはこの委員会の存在も活動も悪いことではないし、ここで言われていることが実現できれば間違いなく平均寿命は延びると思う。ただ、この国で、さらにこの党でこれらの実現は難しいと思う。健康は金がかかるものだから。

国の行方

わたしが居住する国がすごいことになっている。

かの不動産屋が4年ぶり2度目の選出を果たして先月大統領に就任した。選挙権を持つ米国市民のほぼ半数があの不動産屋に投票したということになる。
世間では圧勝と言われているが、実際の獲得票数はいずれも半数を超えていない。民主党が48.3%、共和党が49.8%である。州内でどれほど接戦であろうと、一票でも多い側が州の議席数を総取りするので、地図を見ると真っ赤に見える。

とはいえほぼ半数である。何をどうすると一期目で老害を体現したおっさんを支援しようと思うのか個人的にはわからないけれど、立場が違うといろいろあるのだろう。とりあえず一期目では実際に減税をしたので今回も減税するだろうということで富裕層はそちらに流れ、不法移民に困っている人たちもそちらに流れただろう。あとはとりあえず女性の大統領はいやだという向きも民主党には投票しなかっただろう。

なかなか興味深いのは共和党がヒスパニック系の支持を集めたことだ。不法移民のほとんどはヒスパニック系である。同胞を強制送還するという公約を掲げた候補者を支持するというのはどういう気持ちなのだろうか。大統領候補のディベートで何を思ったか某国からの移民について「ペットの犬や猫を捕まえて食べている」みたいな話をするのを聞いて、移民一世や二世がそれでも支持したというならこれはすごいと思う。その昔米国では大統領令により日系市民が財産没収・強制収容されたことがあったが、そんな歴史は知らないし興味もないか。でも、この国はそういうことが起こる場所なのだ。あの不動産屋が大統領にえらばれてしまった今、現代の米国でそんなことが起きることはないだろう、と信じることは私にはできない。

米国はこれまでに「もういいから今国内にいる不法移民に残らず永住権をあげちゃうよ!」みたいな大統領令が何度か出ていて、今回投票した人たちの中にその恩恵で永住権を得て、その後帰化した人もいるだろう。そういう人たちも「不法移民ゴーホーム!」と思ったのか。もっとも、米国で生まれた米国市民だって3~4世代もさかのぼれば移民で、その頃は不法移民という概念自体がなかった。数的にも国別にも制限はなく、とりあえず着いてしまえば出生証明書とか財産証明とかいった書類を出せと言われることもなくさっくり入国して入植した。でも今の移民制度では国別の数的制限もあれば時間のかかる手続きもある。自分の祖先が手続きなしに入ってきて原住民の土地を収用したのはいいけど今の移民が裏口からぬるっと入ってきて自分が払っている税金を使われるのはよくないので「不法移民ゴーホーム」と叫ぶわけだ。

多くの人は不動産屋に心酔しているのではなくて、インフレがすごくて生活が苦しいのでとりあえず物価を下げる、職を奪う不法移民を強制送還する、石油を掘るからガソリン価格も下がる、海外からの輸入品に関税をかけるから産業が戻ってくる、みたいなことを聞いてそれならと投票した、というところか。これだって少し考えたら「ないだろ」と思うところだ。不法移民の就労をよいことだと思ってはいないけれど、現在の経済は不法移民の低賃金での肉体労働が織り込み済みになっていて、こういう人たちがやっている仕事を米国市民がやったら賃金が数倍になって同じ金額では流通しない。石油を掘るのだって初期投資が必要で、4年ごとにころころ変わる政府の方針を考えれば今何億ドルもかけたところで減価償却するかどうかもわからないから参入する民間業者があるかどうかも怪しい。海外からの輸入品に関税をかければ米国内の価格に転嫁されるから消費者の負担が増える。それなら自分で作ろう、と米国内の産業は戻るんだろうか。目先の安さに目がくらんで中国産の製品を購入して自国の産業を木っ端みじんにしたのも、それならと品質を上げて外国製品に対抗しようとしなかったのも米国市民だったのだから、今さら品質や価格で外国に対抗できるようなものづくりができるようには思えない。

でも、そうなったらいいよね、という漠然とした思いに、根拠はないけどとりあえずできるよ!と力強い言葉にして提供したのがあの不動産屋だったことには間違いない。自分は品とか道徳とかいったものとはまるで無縁だけど、アメリカの道徳を取り戻せとか何とか、とりあえず声の大きい福音系キリスト教徒にちゃんと媚を売るのも忘れない。

前回は普通に国とその礎になる法律とに忠実なまっとうな政治家をまわりに置いたらやりたいことになんでも「閣下それは違憲です」「それは民主主義に反します」だのと物言いがついて何もできなかったので、今回は政治家になど頼まずに職業は何であれ自分の言うことなら何でも賛成する白人をまわりに置いてみた、というわけでもう何でもありである。立法機関を無視して憲法に反する大統領令をばんばん出して連邦地裁に止められたり州から訴えられたりする。連邦職員200万人に退職しないかと聞くメールを送ってみる。どうやらあんまり深く考えずにランダムに送り付けたらしく、受け取った国立病院の看護師ががっつり解雇受諾の意向を示しているという。お隣に住む国立病院(VA、退役軍人病院は連邦政府の管轄)で腫瘍科の医局長をするお医者が「あの老害のせいでうちの部署の看護師の3割が退職予定になった。3割抜けたら部署が回らないから患者が治療を受けられない。だいたい国のために働いている医療従事者にメールで退職勧告なんて失礼極まりない。おまえは必要とされていないお荷物だから出ていけと言われるようなもので、能力がある看護師ほどよそに行こうと思うに決まっている。8か月だかの給与分を支払って必要なベテラン看護師を解雇して、でも絶対看護師は必要だからまた採用しないとならない。採用過程に加えて経験者であっても戦力になるまでの準備や指導でどれほど金がかかるかあいつは知らなかろう。余計なことをしやがって」と大変憤っておられた。

個人的に一番ヤバいと思うのは公衆衛生を担当する連邦部門のトップになったのが「予防接種が自閉症を引き起こす」という根拠のない(査読の価値もないオンラインのトンデモ論文がその根拠なんだそうだ)説を流布、私生活では妻がいる身で37人の女性と関係を持って最終的に妻が首をつって亡くなったという人物、ということである。どう考えても公衆衛生はだめだろう、まさか上院がそれを承認すまいと思ったら承認したんだって。もっともこいつはまずいと思っても共和党議員が造反なんかしてトップに目をつけられたら首が飛ぶ。国の未来より保身。

これからこの国はどうなるんだろう。1月25日にガソリンが1ガロン4.99ドルだったのが、今日は50セント上がって5.49ドルでした。あと近くのスーパーでは今日卵12個で10.49ドルでした。先月は7.99ドルだったので二度見しちゃった。物価が下がる理由がないから下がらないだろうとは思っていたけど、上がってんじゃないのよ。ちなみに給料は据え置き。あと株がちょっとまずい調子で、老後のための個人年金が半分になりました。不動産屋はいいよな、もともと金持ちだった上に超金持ちが大親友だから金には困らないもんな。

停電

新年は山火事で始まった。

この州に住んでいてもほとんど記憶にないほどの強い風とかねてからの降水量不足で、おそらくは些細だった火種が大惨事を引き起こした。原因は調査中だが、一部報道では新年を祝う市民が使用した花火によるぼやが鎮火しないままにされていたことではないかとされている。

アメリカ全土でそうなのかはわからないが、少なくともこの州では海が近いために気候がよく、さらに景観のいい小高いところにある住宅地ほど不動産価値が高くなる。気候がよければ山には植物が多く、小高いところというのは要するに山の斜面にあって植物が多いので、山火事が起きると高級住宅地ほど被害に遭いやすいということになる。今回住宅が一番多く燃えたエリアもそんな超高級住宅地だったらしい。今回までその存在すら知らなかったけど。

さて、この山火事が起きたころ、この付近はとんでもない風が吹いていた。もともとの季節風もあっただろうが、火事による温度差が突風を起こしたということもあったのではないかと思う。火の粉がかなりの距離のところまで飛んで延焼を引き起こし、何日にもわたって燃え続けた。

さて、この州では風が吹くと電気が止まるのだが、今回も派手に止まった。このエリアからとんでもなく離れたうちのエリアも止まった。風なんて吹いてなかったけどとりあえず止まった。そしてその停電は10日ほど続いた。

そんなこともあろうかと発電機を購入してあり、ブレーカーボックスに接続して必要時には自家発電に切り替えることができるようにしてあったのだが、王子の節約魂が災いしてこの発電機がものすごくうるさく、稼働は日中のみしかできなかった。私は出勤が早いので朝4時に闇夜のカラス状態で起き出し、懐中電灯で支度をすることになった。さらにこの発電機、供給は4000ワットまでできるという触れ込みが、実際にはせいぜい1500ワット程度だった。だから、使えるのは冷蔵庫と照明、テレビとルーター程度である。日本のコンビニ並みに強力なアメリカの電子レンジを使おうものなら照明が点滅してしまう。そして、洗濯機は出力不足でまったく作動しなかった。

食べるものは水とガスがあれば何とでもなるのだが、困ったのは洗濯である。停電が始まって1週間が過ぎたころ、靴下と下着がなくなった。かくして生まれてもいない時代に逆戻りして徒手で洗濯をすることになった。基本的にアメリカは外に洗濯物を干すということをほぼしないので、干す場所にも苦労した。すすぎが終わると手で絞って終わりになるので機械でするほどの脱水ができず、乾燥までの時間も長くかかった。
タオルやシーツなどの大きなものは通電してからとするしかなかった。

そのうちぼちぼちと復旧するエリアが増えてきたが、うちのエリアは最後まで停電した。10日経つかどうかという頃に復旧した。その後も2週間の間に3回ほど停電したが、最初から最後までここではせいぜい風速3m程度の風しか吹かなかった。

電力会社のサイトで停電しているエリアが参照できるのだが、火事が発生中のエリアに通電しているマークが表示されていた。どういうことかと思ったら、電力会社は山火事の発生を防ぐために停電するのであって、他の理由で山火事が起きた場合には延焼中に電力設備がイカレて発火しても知ったことではないらしい。そこは被災者に寄り添う気持ちで停電していてほしかった。

今後この州では火災保険難民が爆増することになる。これまででさえ火災保険はちょっと火災リスクの高い場所では提供されないか、掛け金が桁外れに高かった。本当かどうかは確認していないが、噂では知事が保険会社に対して火災保険を提供することを義務付ける法令に署名したらしい。今回の山火事でどれほどの保険金が下りるのかはわからないが、これが本当なら保険会社は残らず撤退するだろう。州が提供する火災保険もあるのだが、加入者が少なくどれほどの保険金が実際に下りるのかわからない。

今回の件で思ったことは

1)市民による花火は州全体で禁止した方がいい
2)どんな発電機でもないよりましだが、せっかくならある程度金をかけた方がいい
3)停電が多すぎてEV車はこのエリアには向いていないが、向いていてもテスラは買わない
4)一説によると今回の山火事の要因のひとつは温暖化による渇水があるらしい。そんななか大統領は就任直後パリ協定から再離脱。ついでに不要なダムの放水までしてくれた(連邦管轄のダムらしいのでどうでもいいけど過去最悪レベルの渇水中だから腹が立つ)。あの男が涙が出るほど嫌いだ。


以上です。

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