比較的静かだったとある深夜勤務。少なくとも見た目は静かだった。
先日とある臓器の生検のために24時間安静臥床が指示され、でもなかなかそれが守れなかったとある患者さん、どういう理由かとんでもない疾患を抱えていることが判明した。見つかってよかったね状態。とりあえず絶対安静、絶飲食、トイレ不可で尿管留置、翌朝一番でその領域の科に転科することになった。マジな話、絶対安静のまま移送して治療がされないと最悪の場合生命が脅かされるような状態。
前回のこともあるので担当医から絶対安静の必要性がきっちり説明が入る。もちろんそこには、多少脚色された生きる死ぬの話が散りばめられている。消灯、そしてわたしが出勤。
そして医師の必死の説明はある意味逆効果だった。
医療者はこんな気持ちで説明した。
検査の結果でかくかくしかじかな状況がわかりました。朝まで絶対安静です。安静が守られない場合、これこれこういう状況になる可能性があり、最悪の場合生命にかかわります。
一方患者はこんな風に受け取った。
検査の結果でかくかくしかじかな状況がわかりました。朝まで絶対安静です。安静が守られない場合、これこれこういう状況になる可能性があり、最悪の場合生命にかかわります。
本当に生死にかかわるというときにいきなり本人にがっつり説明をするということは日本では現在でもあまりされていない。第一一刻を争うような状況であれば深夜だろうが未明だろうが必要な人員に召集をかけて処置をする。要するに
「安静にさえして治療を受けたらそれほど問題がないがただ静かにしててくれと言って聞く相手ではないので脅してでもとにかく静かにしててもらいたい」
ということに過ぎなかったんだけど、なかなかそういう老婆心は伝わりにくい。
で、どうなるかというと「緊張して眠れず、多動になる」。
とにかく朝まで寝てしまえばいいんだけど緊張して眠れず、緊張をほぐして眠りやすくする薬もまったく効果がなく、あげくに「もう耐えられない、起きたい」。いやいやだからなんでそうなるのよ。
「しょっちゅう血圧を測ってて正常だってわかってんでしょ、だったらいいじゃん、限界。起きる。」って、あなた、なんでわたしが真夜中に3時間ごとに血圧を測ってるかって、正常範囲でなければ薬剤を使用してでも補正しないとならないからなの。血圧が正常範囲内にあるからあなたの状況も正常に戻りましたというわけではないの。
何をどう言ってもラチが開かない。だれのための絶対安静なのかいっぺん考えてみろと怒鳴りつけたくなる。
で、夜明け前に担当医を叩き起こして再度説明してもらう。担当医は本人に会って、なだめてすかして落としどころを見つけてなんとか朝までしのげるようにとがんばってくれた。
まあそれでしのげなくて最終的には「身体を起こしたらナースコールが鳴る器械」を病室に取り付けて対応した。これは通常認知症の高齢患者に使われるものなんだけど…
確かに本人は心的にかなり危機的状況にあったと思うんだけど、このケースではいったいどうしたら安静が守られただろうかと考えながら帰路についた。セデーション(薬剤による鎮静。意識もなくさせる)は適応にはならないだろうか、いや、転科先ではきっとしてるだろうな、とか、そもそもシフト減ってんのになんでいつもこの患者さんの安静臥床時はわたしが当たるのかな、とか。
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