« 2011年11月 | トップページ | 2012年1月 »

2011年12月

ふしぎな検討会

外国人の看護師国家試験合格率が目も当てられないほどひどいので、国がルビ振りやら英語併記やらの温情措置をとっていたがまともな数字が出ない。そんなわけで今度は「いっそ母国語で国試受けさせちゃったらいいんじゃね?」という案が出ている様子。

当初は滞在3年間で国試に受からなければ帰国する「外国人看護研修生」だったが、実際はどいつもこいつも国試に受からないので期限を過ぎた外国人も国試が不合格でも点数によっては日本にいていいことになり、その頃から呼び名が「外国人看護候補者」になんとなく変わっている。

国は臨床で医療を受ける患者の大多数を占める日本人のことはけっこうどうでもいいから、とりあえず外国人を臨床に出そうよ、という方針でいるらしい。そうでなかったら、こんな検討会自体を開こうと思わない。というか、ここって「母国の免許があるんだから無試験でいいんじゃないんですか」という検討会でなかっただけよかったと思うところなのか。

というわけで引用ふたつ。

引用ここから―――

母語・英語での看護師国試は必要か―厚労省検討会が初会合 医療介護CBニュース 12月9日

経済連携協定(EPA)に基づいて来日した看護師候補者の国家試験の合格率を上げるため、厚生労働省は9日、「看護師国家試験における母国語・英語での試験とコミュニケーション能力試験の併用の適否に関する検討会」の初会合を開き、候補者の母国語や英語による試験実施の是非をめぐる議論を開始した。同検討会では、日本語のコミュニケーション能力を測る試験の併設についても議題とする。関係団体などから意見を聞くとともに、国民から意見を募り、その結果を踏まえて年度末に検討結果をまとめる方針。

この日の議論では、患者の安全や医療の質が保てないとして、日本語以外での試験実施に否定的な構成員が多かった。林正健二構成員(山梨県立大看護学部教授)は、看護師の業務として、看護記録をつけたり医師の指示を理解するためには、「話すだけではなく、読み書きができる能力が絶対に必要」と指摘した。また、熊谷雅美構成員(済世会横浜市東部病院副院長・看護部長)は、「管理する立場としては、試験合格後に就業すると、(日本語以外での試験実施は)看護の能力を担保するのに大変厳しいと思う」と述べた。

一方、加納繁照構成員(日本医療法人協会副会長)は、「(候補者を)受け入れている病院は、かなり負担を掛けて、頑張って教育している。進歩的な話にしていただきたい」と延べ、合格率を上げるための議論の深化を呼び掛けた。

―――引用ここまで

引用ここから―――
日本看護連盟ニュース 2011年12月13日
外国人看護師国家試験、母国語・英語試験導入に反対意見相次ぐ

12月9日、厚生労働省は、経済連携協定(EPA)で来日している外国人看護師候補者の国家試験の実施方法について議論する「第1回看護師国家試験における母国語・英語での試験とコミュニケーション能力試験の併用の適否に関する検討会」(座長=中山洋子・福島県立医科大学看護学部教授)を開催した。

平成20年に日本がフィリピン・インドネシアと締結したEPAでは、経済連携のため両国から特例的に看護師候補生を受け入れると定められている。過去3年間で両国合わせて573名が来日しているが、看護師として就労するために必要な国家試験の合格者数は過去3年間でたった19名。合格率が著しく低いことが問題となっている。外国人看護師候補者が受ける試験は日本人が受けるものと同じで、語学やコミュニケーション能力等が最大の障壁だった。そこで今年の試験からは、難しい漢字へのふりがな付記や疾病名に英語を併記するといった対策が図られ、合格者が前年の3名から16名へ増加した。今回の検討会では、更なる合格率向上のため、試験を日本語ではなく、母国語または英語で回答できるようにする意見が上がっている。

しかし、構成員からは厳しい声が相次いだ。藤川謙二構成員(日本医師会常任理事)は「外国人看護師を受け入れるために日本の医療の質を落とすのか」と述べ、花井圭子構成員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は「日本語能力不足により、薬や医療機器名を間違えたり、連絡事項に齟齬が起きないか」と患者の立場に立った不安を表した。また、小川忍構成員(日本看護協会常任理事)は「患者の安全を第一に考えるべき。日本人でさえ医療事故に対して不安を抱えている。外国人看護師を医療事故の加害者にさせないためにも慎重になるべき」と語った。

林正健二構成員(山梨県立大学看護学部教授)は、EPAによって来日した看護師候補者が特例として日本語能力試験を免除されている問題を指摘。「コミュニケーションは話すだけでなく、読み、書きも重要。十分な日本語能力がなければ看護記録も作成できない。記録がもし間違うことがあれば、診療報酬の算定に支障をきたす」と注意を促した。

実際に現場でインドネシア人を受け入れている熊谷雅美構成員(済世会横浜市東部病院副院長・看護部長)からも「臨床の立場でいうと、看護師試験を受けた後で日本で就業することを前提としているならば、日本語能力なくして、看護の能力は担保できない。(日本語による)国家試験が通った後に働くことを前提にするべき」という意見が出た。

この検討会は以降3回開催され、来年3月にとりまとめが行われる予定。

―――引用ここまで

この件に関しては国民のご意見を募集する予定らしい。今のところ案のみで、実際のパブリックコメントや国民のご意見募集のページに掲示はない。

ただ、国試の日本語はもうちょっと砕いてもいいかもしれないとは思う。お役人さんが自分たちの慣れた「確実な日本語」で作ってくれるので、たまに読みづらくてわかりづらいところがある。ネイティブだから「きっとこういうことだよな」って見当つけて回答できるけど、外国人の皆さんにはしんどいかも。でもだからって母国語で受けさせるのはどう考えてもおかしいよね。

ちなみに、日本看護協会はこの会合について正式な見解を出していないが、文中にあるように常任理事がこの会合の構成員で会合の中でがっつり反対している。また日本看護協会が今年3月に第100回看護師国家試験での外国人看護師候補者の合否結果を受けてマスコミ向けに出した見解の中で、外国人向けのルビ振りや英語併記についてかなり厳しい批判をしている。以下に一部引用する。

「患者の安全を守って日本の医療現場で働くためには、医療従事者との共通言語である専門用語の理解は最低限必要な能力です。専門用語の理解不足から外国人看護師を医療事故の加害者にしないためにも、ご理解をいただければ幸いです。

また、外国人看護師候補者の看護師国家試験の合格率が低いのは、インドネシアおよびフィリピン両国と合意したEPAの枠組みにおいて、日本語能力を問わず受け入れていることが原因です。外国人看護師を受け入れている諸外国においては、医療現場で働く上で必要な言語能力を審査し、その上で受け入れています。現状では日本語での看護師国家試験が言語能力確認の機会となっており、その意義を改めて認識する必要があります。

今後、国家試験合格率を上げるためだけではなく、来日された外国人看護師候補者の皆様の人生がEPAに翻弄されず、日本での経験がインドネシアおよびフィリピン両国の医療、看護の発展につながるようにするために、来日する前の段階で、あらかじめ日本語能力を審査することを検討すべきと考えます。」

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

医療訴訟のトレンド

日本がTPP(環太平洋経済協定)に参加すると医療はどうなるのか、もしかしてこんなことが普通に起きるのかと読んでちょっと怖くなった話。医師によって書かれたもので、もともと経済サイトに掲載されたものがメールマガジンに転載されたもの。医療崩壊というのはよく聞くけど、医療消滅ってすごいね。

転載していいものかどうかわからないので、リンク貼っときます。

自動車事故に遭った女性が国立大学病院に運ばれて手当てを受け、その後出現した後遺症について「適切な処置が行われなかったため」として患者に保険金を支払った保険会社が訴えを起こしたもの。保険会社は保険金の半額を大学病院が負担すべきだとしている。金額は1億7500万円。

この訴訟が、遺族を原告とする訴訟とどう違ってどう問題なのかはリンク先に詳しいが、要するに「ミスを明らかにして同じことがおきないようにしてほしい」ということを求める訴訟と「お宅さんのミスのおかげで保険金を支払わないとならなかったから金払って」という訴訟との違いである。個人保険が増えるとこういう訴訟が医療訴訟のトレンドになるのかもしれないね。

うちの病院を含めてこちらの病院は経営者と医療者とが分かれていて、お互い牽制しつつ(「おまえらちったあ節約しろよ」「患者の安全のために必要だからそれくらい捻出しろや」)儲けが出るようにしているのだが、日本は国が医療費を安く抑えていて、さらに病院のトップが医師であることが多いので、病院はあんまり儲からない。研究好きな医者が多かったり良心的な医者が多かったりすると、さらに持ち出しが増える。

だから損害賠償だなんだと毟られるとけっこうしんどいというか、んじゃもうやめちゃおうかみたいな話になるし、医者もリスクの高い分野を回避するようになる。おかげで医学生が皮膚科だの耳鼻科だのばっかり志望するようになった。そうでなくても肩で息をしながら歩いているような医療界に、後ろから助走をつけて飛び蹴り食らわすのはやめた方がいいんじゃないかと無関係ながら思う。

地域によってはお産難民みたいはことが起きているようだけど、実家のあたりもここ15年くらいで産婦人科が減って婦人科ばっかりになりました。

| | コメント (4) | トラックバック (0)
|

Let's face the music

ケイティ・ペリーがかわいい昨今、そういや「T.G.I.F.」以来何か新しい動きがあるんじゃないかとグーグル先生に聞いてみたら新曲が出ていた。「The One That Got Away」というちょっと暗いタイトル。アップテンポなのに内容が暗い。

10代で出会った「運命の相手」を自分が手放してしまった、やり直せるなら今度は手放したりしないのだが、相手はすでにおそろいで入れた刺青を消して新しい人生を歩んでいる。やり直せるなら約束を破ったりせずに一緒にいるものを…といった日本人好みに仕上がった一曲。この人は商売上手らしく、独立記念日が近い頃に「Firework」(独立記念日のある7月のみ、アメリカでは花火が解禁される)、寒くなった頃に恋人との別れを歌った曲と、さりげなく季節に合った曲を出している。

さて、グーグル先生がくれた回答のサイトには対訳が載っていたので目を通して、おや、と思うところがあってほかのサイトの和訳にも目を通したんだけど、あれだ、Face the music はみんな「音楽に向き合う」って訳してるんだな。日本盤の訳詞はどうなっているんだろう。いつも思うけど音楽メディアの訳詞って間違いだらけだよね。

Someone said you had your tattoo removed
Saw you downtown singing the Blues
It's time to face the music
I'm no longer your muse

あなたがおそろいで入れたタトゥーを消したと聞いた
ダウンタウンでブルースを歌ってるって
わたしが報いを受けるときが来たのね
わたしはもうあなたの女神じゃないのね

Face the musicというのはどうかすると聞くという程度のイディオムで、「自分がやっちまったことに対しての罰を受ける」といったような意味に使われる。ここでは、手放すべきでなかった男を失ってしまったが、それは自分の落ち度であって今自分はその罰を受けているのだという話。musicという単語が使われていながらこれはまったく音楽に関係がないが、この元彼がブルースを歌っているのでつい音楽と向き合うと訳してしまったんだろうと思う。

ケイティ・ペリーは発表する曲のほとんどが自作と言っているが、その真偽はどうあれとてもそれっぽい。この部分で「I'm no longer your muse」と歌っている。Museは知ってのとおり音楽を含めた学術一般を司る女神だから、ふたりがともに音楽を目指していたこと、この彼にとって自分が音楽へのインスピレーションだったということを示唆している。

王子は若いのにがっちがちの保守なので、ゴスペルをやっていたペリーがポップに転向したうえに過激な内容を歌っていることに感心しないというスタンス。わたしも、この人の歌う内容が10代にもたらす影響を考えるとちょっとどうかと思うけれど、この人自身はかなり賢くて、ポップスのディーバとしてのケイティ・ペリーを演出しているだけなんじゃないかと思っている。いつか黒く染めている髪をもとに戻してほかの音楽に転向するときが来るのではないかと。

やっちまったことへの罰を受けるという言葉で「事故報告書」を思い出すわたしは小心者。造影CTがあるのに患者に飯食わせちまったとか。日本の臨床はトラップだらけだよね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

ダニー・シェイふたたび

ちょっとびっくりした話。

クリスマスカードを投函しに郵便局に行った。それほど広くない駐車場に車を停めたらかなり左寄り。でも車自体が小さいのでライン上でもなく線の内側に収まっているし、まいっか、とそのまま建物に入って用事を済ませた。

建物から出てきたら、わたしのフィットの横に入ろうとしている車がいた。頭から突っ込んでいるがかなり苦労しているようで何度もハンドルを切り返している。

この駐車場は柵で囲まれていて、通路を真ん中に左右7台程度計14台くらいが停められるもので、わたしはその向かって右側の奥から2番目に頭から突っ込んで停めていた。その車は、わたしのフィットの左隣、一番奥に入ろうとしていたのである。

この車というのがフルサイズのピックアップトラック、、一般家庭用では最も大きいものだった。いやよくもこんなでかい車をこんな狭いところに入れようとするよな、他に空いてるところもあるのに…と思いながらひたすら切り返すのを見ていたが、こすられたらいやだな、と思って車に乗ることにした。「所有者がここにいるよ。こすったら高いよ」というサイン。

フィットの後ろすれすれを出し入れしていたので、フィットの前を横切って運転席に乗りこむ。この人がまともに停められたら出ようとエンジンをかけた。

サイドミラーを見ながら正直いつこすられるかとびくびくする。めがねをかけていなかったので視野は平面で、距離感が薄いせいでより怖い。何度かの切り返しの後、車が止まる。止まったんだが困った。トラックが斜めにとまっている。車体が長いから、荷台の後ろがこちらに張り出している。これだと正直うまく出る自信がない。

一度かけたエンジンを止めた。うまく出る自信がない以上、出すわけにはいかない。この人が郵便局で用事を済ませて出て行くまでここにいるしかない。この人は何とか車を突っ込んだんだから出せるだろう。この人がいなくなればそれほど出すのに苦労はしない。

クリスマスで郵便局が激混みかもしれないと、ケータイからiPodからPSP、本までいろいろと暇つぶし用品を持ってきていた。20分もあれば順番は来るだろうけど、5時間くらいまでなら潰せる。どれから始めようかな。

…と、そのトラックの助手席の窓が開いて、運転手らしいオバハンがシート越しに顔を出していきなり怒鳴る。たぶんオバハンな年齢なのだが、顔がのっぺりしていて幼いというか、経験値が低い表情をしていてちょっと怖い。

「ちょっと、車出しなさいよ!何なのよ、こっちに出っ張って!」

実際わたしの車は左寄りだったのだが、このときわたしの右側のスペースも空いていた。当然ながらこちらにはかなりの余裕がある。バカでかい車を、他に停めるところもあったのにわざわざ奥の狭いスペースに突っ込んで、自力ではまともに停められないから先にそこに停めた相手に怒鳴りつけて出させようってか。

「この車は線内に収まってますが」

「こんなにこっちに寄ってるじゃないの!はやくどかしなさいよ!」

「こちらが先にここに停めていたはずです。他にも停めるところがあったのに、わざわざここに停めたのはあなたでしょう。だいたいそちらのトラックのケツがこんなにこっちに出っ張ってるのに、こっちゃこすらずに出す自信なんかない。動かす気はありません」

実際は慎重に動かしたら出せないことはなかったとは思う。ただ雨降りで視界が悪く、郵便局という人や車の出入りが激しいところという、そうでなくてもかなり神経を使う状況だったので、斜めに止まったこの車を避けながら後ろ向きに出すのがわたしの技術ではしんどかったという話。こすりゃ当然こっちの責任だし、だいたい物言いが気に入らない。「大変申し訳ないけど、あまりスペースに余裕がないのでうまく停められない。車を出してもらえませんか」なら考えた。

オバハンが言う。「ここであなたと何時間も言い合いをする暇はないの。とりあえず出してちょうだい」

とりあえずって何だよ。だから出せないっつってんだろ頭悪いな。この辺でダニー・シェイの歌うジャスティン・ビーバーの替え歌「What the hell are you talking about」が脳内で流れ始める。

「いや~、こちらは別に急いでないのでいいですよ。この状況でこすらずに車を出す自信がないから出せないんです。こちらが出してお宅の車をこすったら、責められるのはこっちですし」。あたしほんとに全然急いでないの。なんなら今からPSPでパタポン3始めちゃってもいいのよ。

するとこのオバハン、鼻で笑って言った。「そんなチッコい(マジでそう言った)車なら余裕で出るわよ、早く出しなさいよ」

扱う技術もないでかい車に乗って狭いスペースに車を中途半端に突っ込んで、挙句にそれを先にそこにいた他人に責任転嫁して怒鳴りつけて、さらに人の車にケチをつけるってか。おまえはアベオでも乗っとけやぼけ。

「運転に自信がないから、こんな『チッコい』車に乗ってるんです。そんなわけでとにかく無理ですから」言い放って窓を閉める。王子に電話して夕飯適当に食っとけって言おうかな。冷蔵庫にカレーの残りがあったよね。

オバハンはギャーギャー喚きながらも車を出して再度切り返し、若干反対側に寄った。まあこんなもんか、とこちらも車を出した。そのまま駐車場を離れる。

いやなんかびっくりしたわ、変なおばちゃんに引っかかったな…と思いつつ、とりあえずこすらなくてよかったと安堵して、スーパーに寄るのをすっかり忘れて帰宅。

王子に顛末を話したら「よくやった!」ですと。わたしとしては噛まずに淡々と言いたいことが言えたのがうれしい。英語の上達は恋愛と喧嘩だね。要するに大きな感情の動きということか。

なんか郵便局に行くと面倒が多いような気がする…

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

言葉の壁

引用ここから―――

別の患者検査、配膳間違え…外国人に言葉の壁―看護師候補者の実態調査・厚労省 

時事通信社 12月9日

外国人が日本で受ける看護師国家試験の言葉や、コミュニケーション能力について議論する厚生労働省の初会合が9日開かれ、同省が明らかにした調査で、看護師候補者として医療機関で受け入れられた外国人がコミュニケーションに苦しむ実態が浮かび上がった。

調査ではインドネシア人候補者の問題事例を集計。それによると、エコー検査への患者移送を頼まれたものの、名前を聞き違え、別の患者を連れて行ったり、患者の名前が読めず、配膳を間違えた結果、別の患者に食事を提供してしまったりしたケースがあった。

また、入浴予定の患者を迎えに行くよう指示を受けた際に「分かりました」と答えたものの、実際は迎えに行かなかったり、話しかけても返事がなく、ケアが雑だと患者から苦情が寄せられたりした事例もあったという。

外国人看護師候補者のコミュニケーション能力について、受け入れている医療機関の研修責任者にアンケートしたところ、「日本人職員が平易な言葉でゆっくり話をしても、業務に一部支障がある」との回答が16%に上るなど、言葉の壁に苦しむ様子が判明した。

―――引用ここまで

厚労省が経済連携協定に基づいて途上国の看護師研修生を受け入れる事業は2008年に始められた。3年間の滞在期間中、毎年1回、最大3回看護師国家試験を受験できるが、最初の年は全滅、翌年は1.2%。3回目で合格しなければ帰国しないとならないという事情を受け、200箇所もの英語併記やらルビ振りといった国を挙げての外国人向けチート仕様を国試に実装、奏功して翌年の合格率は脅威の4%に上昇した。

冗談はさておき、合格率はコンスタントに9割程度という明らかな「受からせるための試験」にこれほどばかすか落ちたら事業も何もまったく現実味がない。

で、厚労省が発表した現時点での結論が「言葉の壁」。やる前から結果がわかりきっていても、とりあえずやってから「だめでした」と言わないとならないところが大変奥ゆかしい。

しばらく前に日本の小学校で英語が必修化されたが、言語教育には若い(というか幼い)頃から英語教育を始めたほうがいいという考えに基づいたものだ。本当に必要なのかとか方法は合ってるのかとかいろいろあるだろうが、基本的には間違ってないと思う。

一方この看護研修生事業の対象は大卒以上の看護師免許保持者、さらに実務経験がある者に限っている。大卒看護師で実務がある時点ですでに20代を数年過ぎていて、中堅なら30代。そんなわけで、このみなさんが文字の読み書きどころか挨拶も怪しいレベルの外国語を実務がこなせるレベルまで習得するのが非常に困難だということは、政府は最初からわかっていたはずだ。ほとんどが使い物にならないとわかっていてそれでもなお金を出して受け入れるというのは、懐が大きいか頭が悪いかのどちらかだ。

で、この研修生は日本の看護師免許を持たないためにできる業務は無資格の看護助手レベルなのだが、冒頭の記事にあるようにそれでも事故報告書を書かないとならないレベルの事例が起きている。

言語のハンデがある外国人の意欲をかって手間隙やら費用やらをかけてがんばってもらっても、趣味の世界ではないから大事なのは「打率4厘」というところであって、「がんばった」に意味はない。日本には日本語ネイティブの潜在看護師が55万人いる(推定)。リスクを背負った外国人に看護助手レベルの仕事をさせて月20万払う余裕があるなら(無資格の日本人看護助手なら初年度月収は12~13万程度)、その分日本人にまわして意欲を出してもらったほうが早くて安上がりだとやっぱり思う。

| | コメント (4) | トラックバック (0)
|

人を殺すにゃ刃物は要らぬ…

引用ここから―――

呼吸用のどの穴、看護師誤ってふさぎ患者窒息死 2011年12月4日 読売新聞

愛媛県立中央病院(松山市)は4日、70歳代の男性入院患者ののどに開けられていた呼吸用の穴を、看護師が誤って塞ぐミスがあり、男性が窒息死したと発表した。

漢語師は男性が口や鼻でも呼吸ができると誤認しており、主治医らとの間で情報共有ができていなかった可能性があるという。県警松山東署が、業務上過失致死容疑で調べている。

同病院によると、男性は脳内出血で11月15日から入院。約10年前に受けた喉頭がんの手術以来、口や鼻で呼吸ができず、のど元に「永久気管孔」(直径約2センチ)が開けられていた。

病院では気管孔をガーゼで覆って異物混入を防いでいたが、ガーゼが外れがちだったため、20歳代の女性看護師が3日午後3時ごろ、代わりに通気性のない合成樹脂性の粘着シートを貼って穴を塞いだという。約1時間半後、巡回していたこの看護師が男性の呼吸が止まっているのに気づき、午後5時ごろ、死亡が確認された。

看護師は11月25日から男性を担当。男性のカルテには「喉頭の摘出、気管切開あり」との記載はあったが、「永久気管孔」とは記されていなかったという。

引用ここまで―――

気管切開(気切ともいう)というのは、呼吸に問題がある場合にのどに穴を開けて呼吸そのもの、あるいは痰の喀出を助ける処置のことで、開けたところにカニューレを入れて呼吸管理をするもの。

一方、永久気管孔というのは喉頭がんによる喉頭全摘の場合に食道と気道とを完全に分断し、気道を変更してのどの穴から呼吸をするようにするもので、口や鼻は肺とはつながらなくなる。口から消化器へはつながっているので食事はできるが、声帯を使って発声したり、熱いものを吹いたりといったことはできなくなる。

どちらも身体の同じ部位に穴を開けるのだが、前者であれば必要がなくなった時点でカニューラは抜かれ、その後多くのケースで穴は閉じる。1.5~2センチ程度の穴であってもけっこうあっという間に閉じるものだ。問題が完全にはクリアせず気切が閉じられないという場合には、それぞれに応じたカニューラが使用されることになる。

永久気管孔は閉じないように手術できっちり開けていて、別に呼吸器の問題から開けたわけじゃないからカニューレもいらない人が多く、のどに穴が開いていてそこから呼吸する。肺に直結しているために異物が入ればそのまま肺炎を起こすので(むせるとものすごく苦しいが、それだけ身体にとって肺に物が落ちることが脅威だということだ)、四角いガーゼの上部にひもをつけて、のれん、あるいはエプロンのようなものを作って首に巻くことが多い(と思う。わたしがいたところはだいたいそれを使い、家族に作り方を教えて退院させていた)。

それにしてもいろいろとすごい。まずはもちろん頭の弱い女の子が悪気なく永久気管孔を塞いじまったというのが何よりすごい。しかもこの日が初めての受け持ちではなく、最初の受け持ちから10日経過している。事故の多くが忙しくてチェックが抜けたというようなものだけど、これはもう全然違う次元の事故である。

そして、病院がそれをかぶって行った記者会見でのコメントが「看護師に患者の状態を正確に伝えていなかった」というのがまたすごい(ANNニュース)。素人さんじゃないんだから、担当する患者の現病歴と既往歴くらいは把握してないとお話にならないのに、悪いのは状態をきちんと手取り足取り教えていなかった病院ですというのは、まっとうに勤務している一般看護師への侮辱ですらある。

医療事故の種は尽きないもんだね。塩化カリウムを原液で静脈から注射して患者が死亡する事故が一時期相次いで起きて、「人はたかだか液量にして20mlの電解質で死ぬんだなあ」と思ったものだけど、人はぺらっぺらの透明フィルム材1枚でも死ぬんだなあ。

でも、こういう事故を起こしそうな、明らかにヤバい看護師が事実として臨床にいくらでもいる。経口と経静脈の区別がついてないとか、皮下注と筋注の区別がついてないなんて看護師をたまに見かけたけど、臨床は人手不足すぎてどれほど使えなくても簡単には解雇できない。

看護婦さんの給与を今の倍程度にがっつり上げて求人倍率を上げ、看護師養成機関の偏差値を上げたらもうちょっとまともな人材が来るかもしれないんじゃないかと思う。偏差値だけで判断するのはよくないと言われると思うけど、医学部は実際それが物差しになって機能してるもんな。

あるいはアメリカみたいにボトムラインを下げて難しいことをなくして「アホでも事故が起こせない」ようにするというのもありかも。これも金がかかるからだめかもしれないけど。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

それはちょっと

通常永住権保持者に発行されるグリーンカードは10年有効なのだが、アメリカに住むために金を払ってアメリカ人と偽装結婚をする人も世界には多いらしく、婚姻による永住権に基づいて最初に発行されるグリーンカードは2年間有効になっている。入国から2年後にこの条件を削除する手続きをして10年有効のグリーンカードが発行される。

そんなわけでわたしも今年更新。手続きをしてその後そんなことはきれいさっぱり忘れて日々に追われていたら国務省から手紙が来た。「追加書類提出のお願い」とある。

要約するとこんな感じ。X月X日まで猶予を与えるので、期日必着で貴殿の結婚が親愛に基づく正当なものであることを証明する書類を送付されたし。一度に送付しない場合、申請自体が却下されることがあることを了承されたい。

つまりあれだ、かいるびおまえ永住権欲しさに偽装結婚してるだろ、違うと言いたいならまともな書類を出してみろと言われたという話。

で、王子がキレる。これ以上何出せってんだよ、あるもん全部送っただろざけんなよ。そしてひとしきり吼えた後「永住権が取り消しになったら一緒にいられないよう」と頭を抱え、「弁護士を雇ったほうがいいんじゃないのかな」と友人に移民専門弁護士に心当たりがないか聞きはじめた。

困ったなと思いつつ、そんなことになるのではないかという気はしていた。家の名義は王子単独で、共同名義に変えたほうがいんじゃないのと言ったら手続きがものすごく面倒だとか何とかうじゃうじゃ言ってそのままになっていた。別に家なんかに興味はないからわたしはどうでもいいんだけど、家が共同名義でないとお上から見ると同棲の延長ということか。戸籍制度がないからペーパーワークにあんまり説得力がない。

それから銀行の共同口座の残高証明は出したけど、うちは独立採算なので普段この口座取引は一切なくて、ふたりの連名でした確定申告の還付金を突っ込んでそのまま放置。生活費も部門別費用負担制度なので、電気代は王子、インターネットはこちら、携帯は各自というように名義が分散している。お互いへの強い責任感なしにまっとうな結婚はないと思うけれど、お役所が見たい種類の美しい夫婦愛はたぶんその眺望に含まれていないと思う。

子供がいるとこれが最大の証拠になるのだがこれもない。さらに入国後半年程度で就職してまともに金を稼いでいたら、確かに偽装だと思われるのかもしれない。

却下されてもたかが国外退去だろ、おまえらメリケン役人にはもううんざりだよ!と思って気がついた。いや待て、日本に帰るということは、日本で無期限に看護婦さんしないとならないということだな…

それはちょっと、というわけで今必死に証拠になりそうなものを探しているところ。日本の友人からふたり宛てに送られてきた手紙、一緒に日本に行ったときの搭乗券の半券とパスポートのスタンプ、空港横の有料駐車場の予約券、王子が勝手に定期購読の手続きをした婦人雑誌(表紙にわたしの名前と住所が書いてある)、コストコの会員券(わたしが入っていて王子が家族会員になっている)。あとは大量の写真。

日本自体が比較的豊かで近隣の国から密入国者やら偽装結婚での入国やらが絶えない国なので、日本人が生活のために偽装結婚までしてアメリカに居着くようなことはまずない。ついでに最終的にだめならふたりで面接になるのであんまり心配してないけど、ただただ面倒。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

« 2011年11月 | トップページ | 2012年1月 »