中古住宅の光と影
家を買った。
アメリカではたいがい建築会社が土地を購入、そこに適当に数種類設計した住宅を数十件から百件ほど一度に建てる計画を立てて購入者を募る。建てる前に契約すればある程度のカスタマイズができるが、建ってからの購入は完全な建売住宅になり、いくつかあるうち好きなデザインの家を選んで購入することになる。これらの住宅は同一価格帯なので、ご近所さんも同じような経済状態であることが多い。そして、それぞれが好みと予算に合わせて家の中の設備や庭をカスタマイズしていく。住宅はかなり長持ちするので、こういったアップグレードがされていれば売却の際の価格を上げることができる。
住んでいたエリアの治安に不安を感じるようになったので、ここ5年ほどいい物件はないかと探していたのだが、中古住宅でよさそうなものはなかなか出てこないし、新築はコスパが悪すぎるといった具合でなかなかうまくいかなかった。完全にあきらめていたところにある日中古住宅市場に出てきた物件を王子とともに気に入り、それまでに失敗から学んできた購入のための技術を駆使して交渉し、縁あってか入居に至った。同じ市内でもかなり閑静なエリアで、どの家もきれいに手入れがされている。以前のお隣さんのような外壁が剥がれ落ちたまま放置しているお宅も、庭で大麻を栽培するお宅もなさそう。
アメリカではあまりしないとは知っていたけれど、せっかくだからと王子をせっついて挨拶回りをした。お取り寄せしたちょっといいお菓子にカードを添えて手土産にし、両隣と向かい数軒を回った。引退した老夫婦や裁判官、大学教授といった穏やかな皆さんで安心した。
入居した住宅も、以前のオーナーが終の棲家にすべく住みやすくするためにかなりのアップグレードを施していた。庭はプールが古いデザインだったからと一新し、造園し、通年花を見ることができるように季節ごとに咲く木を植えた。一角に噴水を設置するために電気工事までしたらしい。住宅そのものも外壁や屋内の壁や床をイタリア調のデザインで統一し、さらに1階部分の屋根を一部取っ払って2階に部屋をひとつ増築、座って眺望が楽しめるバルコニーをつけた上に外階段まで設置した。
とはいえそうそうすべてがすばらしいわけはなく、中古住宅だからいろいろ問題がある。天然石を使った床はあちこちに穴があいているし、トイレがカーペット敷きというのはありえないので入居前にカーペットを交換、床も一部交換した。乾燥機を使ったら排気口からときどき埃が飛び出してくるので内部を見てみたら、どうやらフィルターを掃除する習慣がなかったのか、圧縮されてフェルト状になった埃がみっちり詰まっていた。あとなぜか靴下が3足と鉛筆まで出てきた。噴水は淀んで底が見えず、スイッチを入れても動かない。意を決して再生に取り組み、水を抜いて層をなして沈殿したごみを取り除いてブラシでこすり、モーターを分解して中にみっちり詰まったごみを洗い流し、完全に詰まったパイプもパイプブラシできれいにし、1週間かけてついにきれいな水が流れるようになった。
そして今最も困っているのが水漏れ。家の周囲の土中にスプリンクラーがもれなく配置されていてタイマーで水がまかれるのだが、そのどこかが漏れているらしい。入居してから月の水道代が4万円で、プールがあったりスプリンクラーがあったりするから高いのかと思っていたら水が漏れているらしい。なんと、1分あたり1リットルの水が昼夜を問わず漏れているんだと。屋内ではなく屋外らしいのだが、庭のあらゆる場所の土中に水道管を通してスプリンクラーが設置されているので、どこで漏れているのかはあたりをつけて掘り返してみないとわからない。ここ1週間ほど王子があちこち掘り返しているのだが、いまだに掘り当ててはいないらしい。コンクリでがっつり固められているエリアも多いので、そこは掘り返せない。見つかるのかな、水漏れ箇所…
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