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2023年1月

2035年EV車問題

わたしが住んでいる州では、あと10年もすると新車販売はEV車のみが可能、という法律が施行されるという。ガソリン車はもちろんハイブリッドも新車販売が禁止されるらしい。

詳細は興味がないから詳しく見てないけど、数十年はグダグダになると思う。EV車の普及率はこの州では国内でダントツに高いらしいが、それでも1割に届かない。さらに州の南部ではEV車を候補に入れる人自体が少ない。

というのも、州の南部では電力供給が不安定だから。州南部に電力を供給する電力会社の電力設備が数年前に強風のために破壊されて発火、これによる大規模な山火事が起きた。あまりに被害が大きく州政府が「設備のメンテナンスをちゃんとしろ。はい罰金」とものすごい額の賠償金を科した。これに懲りた電力会社はメンテナンスに力を入れる代わりに「強風が吹いた日は電力を止める」という斜め上の方法で山火事を防ぐことにした。というわけで強風が吹くとそのエリアでは電力が止まるのである。たとえそれが家族親戚が集まる国民の休日であろうが、エアコンが止まったら年寄りが死にそうな夏の昼間でも止まる。本当に止まる。そしていつ電力が復帰するかわからない。電気が止まれば当然EV車の充電もできない。

日光のさんさんと降り注ぐ場所なので、じゃあソーラーパネルを導入したらいいんじゃないのかと思うだろうか。現在州政府によるソーラーパネル導入の補助があって若干お得でもある。

しかしここにも問題がある。ソーラー発電は晴れた日中が頼みだが、多くの人はその時間帯には仕事先にいて家で充電をするということができない。じゃあ蓄電池を設置して昼間の電気を貯めたらいいじゃない、と思うのだが、蓄電池は高価なうえに州政府の援助がない。現時点でソーラーパネルを導入する人たちの目的は、日中に得た電力を電力会社に売ることで夜間に使用する電力代を相殺あるいは軽減することである。蓄電池を導入することで電力会社と縁を切り、日中に貯めた電力を夜間に使うという自給自足を目指す人もいる。EV車をセカンドカーとして購入し、蓄電池代わりに家に置いておくという方法もあるが、価格から考えてこれにどれほどのメリットがあるのかはよくわからない。

そんなわけで州南部に住む人たちにとって「富裕者層の自家用車のうち一台がテスラ」あるいは「EV車は高いし電気が止まったらアウトだから今はいい」という代物である。法律が施行された後もガソリン車やハイブリッド車の使用が禁止されるわけではないから、ガソリンスタンドはこれまで通り営業する。アメリカに車検はないので、排気テストに通りさえすれば古い車だからといって費用がかかることもなく何十年でも同じ車に乗っていられる。さらに、ちょっとお隣の州に行ってガソリン車を購入して乗って帰ってきて地元で登録、ということも可能である。

というわけで数十年は街中をガソリン車が普通に走ることになる。アメリカの電力自由化は早かったが、消費者にしてみれば電力会社が好き勝手できるようになりました程度の話でしかない。新型コロナで電気代が上がったら二度と下がらないのもみんな最初からわかっている。

ところでうちでも数か月かけてかなり真剣にソーラーパネルの導入を検討した。ただ、日光が遮られないロケーションに20枚以上のソーラーパネルを設置できても、州政府からの補助金があっても、電力を売って初期費用を取り戻すまでに16年程度かかる計算になる。そして現在のソーラーパネルの寿命はせいぜい20年。というわけで導入を断念した。

発電機を買ったから強風が吹いて電気が止められても、自宅での必要最低限の電力は賄える。ガソリン万歳。

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