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不法移民という選択

折りのついでに、前回の「配偶者のアメリカ人に十分な収入がないのでアメリカ永住権の手続きに入ることができない40代後半の日本人女性」について王子に話してみた。

王子即答。「このケースの回答は、『観光目的と偽って入国して不法にいつく』」。

何バカなこと言ってんの、将来を考えたらそんなこと…と思って考えた。失うような学歴や職歴がなく、英語もがんばって勉強しなきゃ…というレベルだとしたら、アメリカに渡った彼女にどの程度の社会生活があるというのか。二度と日本に戻らない決意で入国し、夫に囲われて経済活動もせずに暮らすのであれば渡米するのに永住権なんか必要ない。ただ入国していついてしまえばそれでいい。運転だって免許がなくても不法移民のみなさんはやっている。問題はふたつ、日本に帰るには国外退去という方法でないとならず、その後のアメリカへの再入国がほぼ絶望的なこと、それから経済的手段がないので夫が経済的に破綻した場合に自らも、またその関係も事実上破綻すること。

アメリカという国はときどき何を思ったか「今アメリカにいる不法移民全員に永住権あげるよ、ほら、みんな在米外国人になぁーれ☆」なんていう政策をとることがある。これでオーバーステイまっただなか、あるいは国境を越えていついたメキシコ移民のみなさんがアメリカに住めるようになって合法的移民のみなさんのブーイングが止まらなくなるわけだ。ただそれは好況華やかな頃の話で、おそらく不況が止まらない昨今、テロのこともありこれからしばらくそんなことはほぼありえないんだろうが。

そんな方法があると知っても食指がまったく動かされないわたしは勝ち組ということでいいのかな?てか、やだよ、誰かに飼われて日本に戻れない人生なんて。

ちなみに王子のその女性に対する感想は「40代後半で英語が話せないのにアメリカで暮らそうとは、とても勇気があると思う」でした。わたしはこの女性のご主人に勇気があると思います。自身に十分な収入がないのに言語的に問題がある女性を妻にして養うという一歩間違えば無責任きわまりない選択は、日本人の男性だと最初から視野にない、あるいは不本意にそんな状況になったらけっこう躊躇するところだろうな。わたしはそんなサムライ魂は日本人男性のすばらしいところだと思います。

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愛と貧困

アメリカにはpoverty lineと呼ばれる、社会福祉制度を受ける条件になる一定水準の年収が定められている。これは日本の厚労省とでもいうべき政府機関から毎年発表されるもので、たとえば今年1月に発表された2009年の貧困ラインは5人家族で25790ドル、昨今の円高で250万円程度といった年収となる。実際にアメリカで暮らした場合にこれだけあればまあ一応の生活ができるとされるらしい。本当にこれで家族5人がまっとうに暮らせるとすればアメリカはいろんな意味ですごい国だなあ。いや、まっとうにではなく死なない程度にか。

思えば居住費をほとんど払わずにすませられる独身看護婦さんだと光熱費込みで6~7万で一応の暮らしができるからそんなに無茶な数字でもないとも言えるのかもしれないけれど、実際に経済的に困窮するケースでは就業に必要な教育がなかったり健康問題があったりと貧困無限ループにあることが多いから、はっきりとした問題を抱えることなく生活しているケースよりもお金がかかることが多い。ああ、不満を言わずにがしがし働きたくなってきた。


さて、外国人を配偶者に娶ったアメリカ人にはこの数字が突然身近になる。子どもがいない場合家族2人分の貧困ライン(日本円にして税込み年収140万程度。いやすごい数字だ)をクリアしていないと配偶者をアメリカに呼び寄せるための移民ビザを請願することができないからである。日本はその辺りは大変おおらかなので、日本国籍を持っていれば収入なんていう些細なことにはこだわらない。婚姻が成立しさえすればだれであれ外国人配偶者を呼び寄せることはもちろん、その後そろって生活保護を請求するなんてことだって可能だ。

大変お世話になっている某SNSで、アメリカ人配偶者を持つ40代後半の日本在住の女性からの相談を見かけた。昨年婚姻手続きをしたが、その後アメリカで販売をしていた配偶者が不況のために勤務制限を受けたために週2日しか出勤できず現在は失業手当で食いつないでいて彼女をアメリカに呼び寄せるための貧困ラインを満たさないのだという。それどころか、住宅ローンの返済にも困るので彼女が仕送りをしているのだそうだ。彼女自身も特殊技能や学歴があるわけではないのでテレアポ…それがどんなものかわたしはよくわからないけれど、そんな名前の仕事を派遣社員としてしているのだという。ジョイントスポンサー(貧困ラインを超えない場合の別所帯のアメリカ市民の保証人。貧困ラインを超えている必要がある)のあてもないのだそうで、「今は主人ともっと話ができるように英語の勉強をしていますが、彼とアメリカで一緒に暮らすにはどうしたらいいでしょうか」というのが彼女の相談だった。

いろいろとすごい。結婚云々の前にいろいろ考える必要があったんじゃないかと考え込むくらい、あるいはOLが仕事に飽きてNY留学を考えるなんていうことが高尚に思えるくらいすごい。いますぐ王子に会ってきみはすばらしいと抱きしめてやりたくなったのだがそれはさておき、とりあえずタコが自分の足を食べてしのぐようなことを今すぐにやめて建設的に動かないとどこであれ一緒に住むなんておぼつかない。どうやら「アメリカで」一緒に暮らすことが目標のようで、確かに日本は15年ほど前から日本語が話せず特殊技能もないアメリカ人が簡単に職を見つけられるような場所ではなくなっているし、彼女自身も日本で配偶者を食わせるほどには裕福ではないようだからその線で行くのは間違いではないと思う。いやそれにしても。

まずはこのアメリカ人配偶者が副職を得てpoverty lineを越える見込みを持つこと、またそれをできるだけ早く実現して収入が多かった頃の納税証明書(過去3年分の提出が義務づけられていて、これで過去の収入が証明される)を使って移民ビザの請願ができるようにすること、もしそれができない場合には自身の資産を一時的に配偶者の口座につっこんで残高証明をもらって資産証明にすること(この場合はアメリカ人配偶者の年収の貧困ライン不足分に5をかけたものがあればいいということになっているから、たとえば年収100万円なら口座残高は200万もあればいい)などを提案した。

女の子はみんな優しいから、回答の半分は花が咲いている。夫婦なんだから一緒に暮らせないのは不自然だから大丈夫とか、配偶者ビザがだめなら仕事を探して就労ビザを出してもらったらとか、観光目的として入国してビザ請願をしちゃったらとか。ああ、こういう女の子ってふつうの家庭に育ち理不尽な暴力を受けたこともない、生きづらさを感じることもまたないかわいらしくて若干ゆるいいい子なんだろうなあと感動する。光あふれるその暖かな非現実さに胸が打たれる。


いろんなテクニックを駆使してなんとか移民ビザを得たとして、そのあと彼らにはどんな暮らしが待っているんだろう。貧困ラインを超えるかどうかという収入で蓄えはなく、英語が堪能ではなく外国で就業可能な技能があるわけでない外国人妻、住宅ローンを返せなくなったとしても昨今住宅には買い手がつかないし、ついたとしても価値が大きく目減りしているから完済不能で破産するしかないけれど、それでも愛し合っているから一緒にいられたらそれでいいんだろうか。それとも、そんな状況では愛が枯れると思うわたしにこそ問題があるんだろうか。

今日もがんばって働いてきます。アメリカならわたしの年収があれば無職の家族が10人いても大丈夫らしいです。金のないやつぁオレんとこ来い!ってやつみたいです。嘘だろ…

追記:外国人配偶者が日本で暮らす場合、日本人配偶者が扶養可能であることを示す書類の提出が必要になるようです。嘘ついてすいません。でも手続きは2~3週から数ヶ月と早いみたいです(配偶者の出身国にもよるらしい)。

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