愛と病気
某SNSの集会所を巡回していたら、アメリカ人男性と遠距離恋愛をしている女性の相談を見かけた。
語学留学中に知り合い、付き合ってしばらく経つ20代学生の彼とは、彼が院を終えたら親公認で日本で一緒に暮らすことになっていた。ところが出会う前に手術をしていた彼の(けっこう不治系の)病気が再発した。一緒にいたい、そばで支えてあげたいので話し合い、婚約ビザを取って半年後の大学卒業を待って渡米し、結婚することにした。
ところが親が大反対していて、病気が治ってから結婚を考えろだの、一緒にいたいなら学生ビザで入国してはどうかだの言っている。自分としては「ずっとそばにいる」という意思表示をしたいこともあって結婚の方がいいと思う。でも不安なんだけどどうするのがいいでしょう、という相談。
親御さんの絶望が手に取るようにわかる今日この頃。学生ビザでの渡米を勧めるあたり、この彼との交際自体は反対していないんだろうと思う。それにしてもこの状況で結婚はないわ…と思っているだろう。
若い女の子が金もないのに「彼の支えになりたい」みたいな実際に何を指すのかようわからん寝言を言うのはしかたがないとしても、この彼、自分にとって日本人の嫁をもらうということがものすごい荷物を背負い込むこと、下手をすれば相手の将来を潰すことだとは思わないんだろうか。
車で買い物に行く、銀行で口座を開く程度のことすらひとりでできるようになるまでに手間も時間もかかって、その間は自分も勉強やら治療やらをこなしながら面倒を見ないとならない。しかも日本の大学を卒業してすぐに結婚したら、職歴が物を言うアメリカでの就職が困難なのはもちろん、新卒を逃すから日本でのまっとうな職歴も絶望的になる。
さらに自分は高額な治療が必要な身で、医療保険会社が理由をつけて支払いを却下すれば、本人のみならず嫁までが莫大な借金を負うことになる(背負いきれない医療費から家族を守るために自己破産する人がこの国では非常に多い)。それ以前に院を終えてもいないのに専業主婦を養っていけるような経済的基盤はあるのか。再発した病気が治療に反応しなかった場合、日本での人生を中途半端にしたまま渡米した挙句にひとりで残された嫁にはどんな選択があるのか。
世の中、やっちまえばとりあえず何とかなることが多いのは事実だけれど、そこにはたいがい何かがあって、たとえばものすごく体力があってがんばれるとか、コネや地の利があったり頼れる人がいたりとか、何かずば抜けた才能があるとか口がうまいとか貧乏に慣れているとか、そういった要素があるもんである。そういう要素が少なければ少ないほどうまくいく公算は低くなる。
もし身内にこんな女の子がいたら、「とりあえず1年分の学費を出してやるから、学生ビザで近くの短大にでももぐり込め。たぶんいろいろ困ったことになるだろうから、そしたら全速力で走って逃げろ」とでも言うだろうか。
愛し合ってる云々なんて当然すぎて前提以前の問題。そこから先、健康でも、手に職があっても、言語にそれほど困らなくても、やっぱり外国で暮らすのは大変だよ。
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